これまで多くの自治体が定住人口の増加を重点課題としてきました。マーケティングの対象領域が「消費者」から「社会」へと拡張した今、シティプロモーションのあり方も変革を求められています。

7月には千葉市、市原市、四街道市とセブン&アイグループ6社による包括広域連携協定を締結。自治体同士だけでなく、民間企業も巻き込んだ協働によって活路を見出す。
自治体におけるシティプロモーションの目的の多くは、認知率の向上、交流人口の増加、その先にある定住人口の増加のほか、観光振興や産業振興、企業誘致です。四街道市もまた同様に、税収の拡大を狙いとした定住人口の増加を目指しています。
一方、前述した目的設定をもう一度見つめ直す必要があるとも考えています。特に、「シティプロモーションで定住人口拡大を目指すことはフィージブル(実現可能)な選択肢なのか」「人口減少期に突入している日本において行政区域単位で人口増加を目指すことは適切な戦略なのか」、これら2つの問いかけを通じて、シティプロモーションのこれからについて考えてみたいと思います。
他の市町村は「競合者」
ひとつ目の「シティプロモーションで定住人口拡大を目指すことはフィージブル(実現可能)な選択肢なのか」は、地方行政機関の「現実」に照らした問いかけです。
職場や学校までの距離、教育環境、交通環境、居住環境、商業施設や病院の有無、地価や住宅価格、子育て支援や高齢者支援の状況……。翻ってみると、人々が居住地を選ぶということには多くの要素が複合的に関係していることが分かります。
これらの要素のなかで行政が関与できるものは複数あります。ただ、予算や労力に照らすと、どの程度の改善策が実行できるのか、ある程度実行できたとしても、行政組織内の担当部門が多岐にわたるため、統一的に実行することは簡単なことではありません。さらに、立地、地形などの所与の要素、地価や住宅価格のような市場動向に左右される要素など、人々の居住地決定には、行政の手が及びにくいものも含まれています。
一方で、シティプロモーションをリードしているのは、主にシティプロモーション課や広報課、政策企画課などであり、ひとつの課が組織全体を牽引するのは難しい場合が多いのではないでしょうか。これはシティプロモーションで観光振興や産業振興を目指す場合も同様です。
各地方自治体が人口増加を目論むチャレンジはもちろんアリです。ただし、それを実現するための有効なドライバー(機動要因)は何であるのかをきちんと分析し、さらにその中でも優先順位をつけた対応策を粘り強く実行していくことが必要でしょう。
また、居住地として選んでもらい住み続けてもらうということは、「他市町村から市民を奪取する」ことを意味しています。他市町村を「競合者」として認識し、効果の高い施策を選びながら、競合者よりも「優位な差異」をつくらなければなりません。加えてこの差異を伝達する活動も必要です。
四街道市では「中学3年生まで医療費無料」という施策が代表的な差異化施策となっています。県内他市町村でも子どもの医療費助成制度はありますが、千葉県北西部エリアで「中3まで無料」の市町村はほかにないため、様々な機会を通じてこの優位性を訴求し続けています …