日々行われているプロモーションや販促における「オリエンテーション」。その中で用いられる「オリエンシート」の構成要素はどういったものがあるのか。本稿ではすべてに共通することを中心に説明していく。
広告会社、SP会社、印刷会社に広告主が業務を委託する際、大きく「オリエンシート」「見積もり依頼」の2つがあります。混在してしまうことも多々あるかと思いますが、両者には明確な違いがあると私は考えています。それは、「オリエンシート=成長戦略を期待」「見積もり依頼=コストダウン提案」という違いです。広告会社であれば「媒体買い付け」、SP会社や印刷会社においては「印刷費」が「見積もり依頼」の対象になりやすいですが、本稿では「成長戦略実現のためのオリエンシート構成」に絞ってご説明します。
オリエンシートの構成はバラバラ
プロモーションや販促を成功に導き、ビジネス成果を得るためには、広告主と広告会社やSP会社、印刷会社が、ひとつのチームとして同じ目的を持って、プロモーション戦略の設計、戦術の具体化、緻密な計画策定、そしてそれらの遅滞なき進行を行うことで、初めて実現するというのは異論ないことかと思います。
私は総合広告会社勤務の時代から、独立した今でも、広告主から数多くのオリエンシートを受け取っています。その数は数えきれませんが、数百になっていることは確実です。しかしながら、その重要な認識合わせの第一歩となるオリエンシートは、会社によって、そして担当者によって異なる構成をしていました。その中で、きちんと狙い通りのビジネス成果を得られたオリエンシートには、共通して押さえられている構成要素があったと考えています。
広告主視点での「オリエンシート」
例えば、広告クリエイターや広告プランナーはクリエイティブジャンプの余地を残すために、「与件はとにかくシンプルにしてくれ」ということが大多数でしょう。確かに、その方が思い切りのよい提案は生まれやすいです。しかしながら、クリエイティブジャンプの先が「らしくなく」「ふさわしくない」方向に飛んでしまうことも多々あります。
自戒を込めてにはなりますが、私が担当させていただいた案件においても、たとえ広告賞を受賞しても、またはCM好感度で年間1位を取得したとしても、ビジネスの成果に結びつかなかったことが多々ありました。
得てして「大企業」と言われる企業のオリエンシートは与件に埋め尽くされ、広告会社をはじめとした外部にとっては「ジャンプの余地が少ない」と思う面もあります。しかし「与件だらけのオリエンシート」が企業の持続的な成長を実現し、結果的に会社が大きくなっていったひとつの理由なのだと考えれば、その方が正しいと言わざるを得ないのかもしれません。本稿でご説明することが「与件だらけ」とお感じになられるかもしれませんが、私が、「オリエンシートは与件が多いこと」を推奨している理由はこの点にあります(図表1)。

図表1 オリエンシートのとらえ方
プロモーションは8タイプ
一度、プロモーションについて整理しますが、図表2にあるように、今はオフラインとオンラインとで大きく分かれ、さらに広告(AD)、自社(OWNED)、販促(SP)、PRとに種別されると思います。ここでは、「Earned」、または「SNS」は公式運用であれば自社(OWNED)であり、SNS広告は当然広告(AD)に分類されるため、記載していません。個別施策について範囲が極めて広く、本稿では説明しきれないため、割愛し、個別施策の上位概念となる「共通項」についてご説明します。

図表2 プロモーションのタイプ
オリエンシートに必要な要素
①「VISION/MISSION/VALUE」
今では、企業、サービス、商品それぞれで「VISION/MISSION/VALUE」の策定、または「コンセプト」などの言い回しを用いながら「ブランド定義の策定」を行っていることが多いかと思います。「完全ブランドAE制」を採用している広告主は、AE担当広告社に対して「VISION/MISSION/VALUE」を改めて共有する意義性は多少低くなりますが、マスはA社、SPはB社、デジタルはC社といったように複数の広告会社またはSP会社、印刷会社、デジタル専業広告会社と分離発注で業務を進めている広告主は、共有が必須かと思います。
将来的に何を目指し、どんな社会的使命を負っていて、どんな価値があるのかを理解していないと、「場当たり的な」「一過性の話題にしかならない」「主語が広告や店頭POPとなってしまうような」提案となることが頻発するためです。
広告主の中で、販促部などに所属しており、そういった商品/サービスなどの「VISION/MISSION/VALUE」や「コンセプト」を把握できていない場合は、ブランドマネージャーなりから共有してもらうとよいと思います。店頭POPひとつとってもプロモーションは...