闇雲に広告を打つだけでは、オンライン集客はうまくいかない。自社の「アセット」の棚卸しを行い、情報を収集・整理し、広告と商品・サービスの改善を繰り返すことが成功のポイントだ。
私たちの暮らすこの世界では、日常生活の隅から隅までデジタルが浸透しています。
検索エンジンで探しものをする、ニュースやブログ、Q&Aサイトをチェックする、買い物する、SNSで知人と会話する、レシピを見る、動画を観る、ゲームを楽しむ⋯⋯。スマートフォンやタブレット、パソコンからウェブサイトやアプリにアクセスするのは、蛇口をひねれば水が出るのと変わらないくらい、ごく普通のことです。今回は、私たちの生活に溶け込んだデジタルの世界での集客の考え方について解説します。
「書く」ことの重要性を理解する
オンライン集客では、自社ビジネスに関連する情報を「書くこと、記述すること」が重要です。「私の言語の限界が、私の世界の限界である」。ウィーン出身の言語哲学者ウィトゲンシュタインがどんな意図でこれを書いたのかは分かりませんが、時を経てオンライン集客を考える私たちにとって、支えになる言葉であるように思えます。
例えば見込み客に自社のウェブサイトを見つけてもらって候補に残るには、広告やキャンペーンの計画より前に、前提として自社の商品・サービスが適切な言葉で記述され、コンテンツとして公開されている必要があります。
また、TwitterのようなSNSで見込み客から信頼や共感を得るには、影響力のある人物に頼んで紹介してもらうよりも前に、自社のアカウントで自ら言葉を発信してユーザーと関係を築いていく必要があります。そうしない限り、何も始まらないでしょう。
このことをもう少し深く理解いただくために、オンライン集客を捉える上で要(かなめ)となる「アセット」について見ていきます。
アセットとは一般的には「資産」「経営資源」という意味です。
オンライン集客では、自社サイトのコンテンツや商品ページ、商品情報データベース、顧客データなど「企業がビジネスを行う上で保持する情報やデータベース」のことを指します。
図1の左側にあるのがアセット、右側にあるのがおもにGoogleの牽引により進化を続けているオンライン広告の打ち手の例です。今回のテーマは広告に限りませんが、筆者はオンライン広告が専門なので、この例を使って考えていきます。例に挙げた動的検索広告は「ウェブサイトのコンテンツと関連する言葉で検索されたとき」、スマートショッピングキャンペーンは「商品情報に関連した言葉で検索されたとき」や「商品情報に興味のあるユーザーがコンテンツを閲覧しているとき」に広告が表示されます。
Googleの広告といえば「設定した検索キーワードに連動して表示される広告」と捉えている方も多いかもしれません。しかし、現在では広告を出す「引き金」は、キーワードよりさらに自社ビジネスの情報がまとまっている「アセット」なのです。
サイト制作は制作会社に、広告は広告会社に外注・丸投げしているだけという企業は、やり方を変えることをおすすめします。オンライン集客の成否は自社が保有する資産である「アセット」が鍵を握っており、自社のウェブサイトに商品情報を適切に「書くこと、記述すること」が重要だからです。「アセットを軽んじる者に成功はなし」と言っても過言ではないでしょう。
SEO=マーケティング環境を整備
オンライン集客の打ち手として、SEO(Search Engine Optimization)がまっさきに頭に思い浮かぶ方も多いはずです。しかし先に述べたように「アセット」がオンライン集客の鍵を握る現在では、SEOの役割は集客にとどまらず、マーケティング活動を行うための「環境の整備」の役割も併せて担っていることを知っておきましょう。
筆者の在籍しているアユダンテでは、SEOはビジネスの事業領域の全体像を見据えた上で、キーワード調査に基づいてウェブサイトのカテゴリやページ、商品情報の項目までを詳細に設計します(図2)。そのようにしてウェブサイトの骨組みをつくった上で、各ページ上に見込み客や顧客が知りたい情報を詳しく、分かりやすく書いて(記述して)いきます。これがまさに先に述べた「アセット」をつくっていくプロセスで、効果的なオンライン集客活動を行う上での「土台」になるといえます。
SEOと聞くと、この「土台」が「検索エンジン」を通じた集客にだけ活かせるものだと思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。オンライン広告はもちろん、TwitterやInstagramなどの「ソーシャルメディア」を通じた集客でも、メールマガジンやニュースレターなどを通じた集客でも、興味を持ったユーザーが訪れるのは、アセットであるコンテンツや商品詳細ページとなるのです。きわめて重要度が高いことを認識しましょう。
計測環境の整備も重要
なお、ウェブサイトや商品情報の整備と並行して、ウェブサイトの計測環境の整備も同じくらい大切です。誰が、どこから来て、どのコンテンツを見て、何をしたか。GoogleアナリティクスやGoogleタグマネージャーのようなツールを活用して、ウェブサイトに訪れるユーザーの行動データを適切に取得し、数値による評価と改善できる環境をつくります(図3)。