生活者の買い物体験は利便性が高まる一方で、新しい商品やサービスとの出会いも加速している。そんな中、いま企業に求められているのは、“また選ばれる仕組み”、つまり生活者の行動習慣に根ざした、持続的な顧客関係を戦略的にデザインすることではないだろうか。本記事では、博報堂のヒット習慣メーカーズリーダーを務める中川悠氏に、習慣化を生み出す方法論を聞いた。
顧客との長く、良好な関係性をどう築くかは、多くのマーケターが直面する課題だ。
博報堂のヒット習慣メーカーズのリーダーでエグゼクティブクリエイティブディレクターの中川悠氏も、広告会社での戦略立案やクリエイティブ制作を手がけるなかで「一過性のキャンペーンではなく、中期的に成果が残る仕組みが必要だ」と強く感じてきたという。
「広告会社でストラテジーとクリエイティブを横断する仕事の中で、単発的なキャンペーンではなく、中期的に成果が残るクリエイティブの重要性を感じていました。ストラテジーが中期的な方策を考えるものである一方で、そのストラテジーを落としこんだクリエイティブは短期的な効果で終わってしまうものも少なくありません。そのような背景もあり、クリエイティブも“長く残るもの”を目指すべきだと考えるようになりました」(中川氏)。
こうした課題意識のもと、中川氏は2017年に社内横断プロジェクト「ヒット習慣メーカーズ」を立ち上げた。目的は、モノからコトへと消費のあり方が変化するなかで、短期間で消えるヒット商品ではなく、人々の生活に中長期的に根付く「ヒット習慣」を生み出すことだ。「持続的に広がる体験、つまりは習慣として生活に入り込んだものは長く残り、ブランドやサービスの価値を支えることができる。だからこそ“習慣化”を視点に持つことが重要だと考えたのです」(中川氏)。
無意識で選ばれ続ける仕組みづくり
しかし、習慣をつくることは容易ではない。SNSの出現によって、商品に出会うタイミングは口コミや生活者の投稿という形が一気に増加。さらに、ECも普及し、いつでもどこでも24時間買い物ができるようになったため、ブランドを切り替えるハードルは一気に下がった。
また、もちろん顧客は常にその日の気分や情報次第で購買行動を変えることができる。...
