推し活をしている一般人に“ファン”がつく? 応援消費は消費者自らが生み出すフェーズへ

公開日:2025年10月01日

  • 岡部大介氏(東京都市大学)

商品やサービスを購入する際に、企業・地域・人物などを応援する気持ちから生まれる消費のあり方である「応援消費」だが、従来の消費活動とはどのような点が異なるのか。応援消費の裏にある背景とその構造について、東京都市大学 メディア情報学部 社会メディア学科 教授の岡部大介氏が解説する。

誰かを応援したい、共感したから買いたいという感情によって生まれる「応援消費」。近年、一般企業にも注目されるようになったキーワードです。

応援消費の初出は2011年 震災から広く使われるように

2022年に発刊された『応援消費-社会を動かす力-』(水越康介著)によると、応援消費とは、消費が他人や社会のための行動ともなり、応援や支援にまで結びつけられる行為。苦境の人や企業を支援する動きを意味する言葉として、2011年の東日本大震災を契機に広く使われるようになった言葉だとされています。その後、2020年の新型コロナウイルス流行において再び注目されるようになりました。

また同著では、主要な新聞のデータベースを用いて調べた結果、「応援消費」が確認された事例の初出は2011年で、2021年までに191件確認されたと記しています。191件のうち110件は東日本大震災に言及しながら応援消費を語っているとのことです。

一方で、アーティストを応援するといった場合や、ファンとして応援するといった場合の応援消費においては、新聞上にはあまり登場していないようです。要因としては、推し活・推し消費の主たる場がインターネット上であったためだと推測できます。しかし、「推し活」という言葉こそなかったものの、インターネット普及以前から、「ファン通信」を自作して交換するなどして、草の根的なつながりが構築されていました。このような「推し活」的な情報交換は、1980年代から、「2ちゃんねる」に代表される電子掲示板、ブログといったメディアでよく見られていたのです。今日ではSNSによって開かれたネットワークとなり、他者にも観察可能になっています。

ここで重要なのは、「推し活」的な活動は、2020年代の情報環境において突如新たにあらわれて広まったものではないことです。1980年代以降のオタク・ファンダム文化に見られた欲望に忠実な消費様式のうち、「お金を使うことで誰かの活動や地域を支えたい」という側面が注目されて、現在の「推し活消費」や「応援消費」と呼ばれるようになった側面もあると考えられます。

コミュニティ内での共創としての応援消費

では購入者自身のために行われる消費行動と応援消費は、具体的にどのような点が異なるのでしょうか。私は「社会的な意義」「コミュニティへの参加・共有」「創作・参加・共創への拡張M」が、応援消費ならではの特徴と考えます(図1)。

図1 購入者自身のために行われる消費行動と応援消費の違い

購入者自身のニーズを満たすための消費は自己充足を軸としているが、応援消費においては社会に向けて行われることが多く、仲間と連帯し...

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「買いたい」の理由は“応援”へ

「モノ消費」や「コト消費」、そして「イミ消費」の登場に見られるように、消費のあり方は時代とともに多様化し、常にかたちを変えてきました。そんな中で、いま生活者の購買行動を突き動かしているのは、「誰かを応援したい」「共感したから買いたい」といった感情のスイッチです。企業やブランド、地域、クリエイターなどへの“応援消費”が、世代を問わず広がりを見せています。いわゆる“推し活”もそのひとつと言えるでしょう。この新しい消費の原動力となっているのが、共感の熱量です。SNSでの発信、クラウドファンディング、サブスク支援、グッズ購入、リアルイベントへの参加──。その行動の背景には、誰かの“想い”に心を動かされ、自らの意思で選び取る消費の姿があるのではないでしょうか。本特集では、「応援」を軸にした最新の購買行動の潮流をひも解きながら、企業やブランドが生活者の“共感”をいかに設計し、販促・プロモーションへとつなげていくべきかを探ります。

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