エージェンティックコマースが変える 顧客体験とECの役割

公開日:2026年8月03日

  • 林雅也氏(ecbeing)、逸見光次郎氏(CaTラボ)

生成AIが生活者に代わって商品を探し、比較し、購入まで進める──。そんな「エージェンティックコマース」への注目が高まっている。だが、その本質を単なる購買の自動化と捉えると、見誤ることがある。AIに任せるべき買い物と、人が時間をかけて楽しむ買い物は、これからどう分かれていくのか。購入までAIに任せないとしても、探索や比較の入口で「AIに選ばれる」ために、企業は何を整えなければならないのか。日本オムニチャネル協会で専務理事を務める林雅也氏と、同協会理事であり、小売・ECの実務に長年携わってきた逸見光次郎氏に聞いた。

ecbeing 代表取締役社長
一般社団法人
日本オムニチャネル協会 専務理事
林 雅也氏

CaTラボ 代表取締役
一般社団法人
日本オムニチャネル協会 理事
逸見光次郎氏

今の空気感は「Amazonエフェクト」と似ている

──AIが買い物を代行する「エージェンティックコマース」が注目を集めています。

:AIが商品を探し、比較し、場合によっては購入まで担う「エージェンティックコマース」は、2026年1月にニューヨークで開催された「NRF 2026: Retail’s Big Show」で、Google CEOのサンダー・ピチャイ氏が、AIエージェントによる購買を支えるオープン標準「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表したことで、一気に注目を集めました。ただ、ここで思い出したいのが、約10年前の「Amazonエフェクト」です。当時も、「小売はAmazonにすべて置き換わるのではないか」と言われました。「エージェンティックコマース」においても、小売やEC事業者が淘汰されてしまうのでは?という議論が巻き起こっている様子を見ても、当時の状況や議論と本質的に似ているような印象を受けます。

図1 エージェンティックコマースの幕開け

逸見:実際、「Amazonエフェクト」で消滅の危機にさらされた業態もありました。特徴的なのは、街の書店や総合カタログ通販、家電販売などでしょうか。大きな影響を受けましたよね。一方で、すべての小売がAmazonに置き換わったわけではありません。

明暗を分けたのは、「どこで買っても同じもの」を売っていたかどうかだと思います。価格、在庫、配送の早さだけで比較される商品は、利便性に優れたAmazonのようなプラットフォームに集約されやすく、取って代わられやすかったんです。けれど、接客や品揃え、空間、コミュニティといった独自の体験を持つ企業は、むしろ強さを発揮しました。

:まさに「均一化の罠」です。接客の質、商品の質、価格などの、どの要素にお...

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選ばれる時代のEC 47社の統括責任者が考える “ニューノーマル”

自社ECは、商品を生活者に届ける販売チャネルとして当たり前の存在となりました。いま、そのあり方を変えつつあるのが、生成AIの進化です。AIは、企業側の需要予測や業務効率化に活用されるだけでなく、生活者が商品を探し、比較し、選ぶプロセスにも介在し始めています。 AIに買い物を一任する「エージェンティックコマース」が注目を集めている様子からも、今後のEC運営には、生活者に選ばれることに加え、AIに商品を正しく理解され、推薦候補に入るための備えも重要になっていくでしょう。 今回のアンケート特集では、こうした変化の中でEC責任者がどの領域に注力し、どのような課題に向き合っているのかを聞きました。現在取り組んでいる施策や今後の投資意向、AI活用への考え方などを通じて、AI時代のECの“ニューノーマル”を探ります。

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