生成AIが生活者に代わって商品を探し、比較し、購入まで進める──。そんな「エージェンティックコマース」への注目が高まっている。だが、その本質を単なる購買の自動化と捉えると、見誤ることがある。AIに任せるべき買い物と、人が時間をかけて楽しむ買い物は、これからどう分かれていくのか。購入までAIに任せないとしても、探索や比較の入口で「AIに選ばれる」ために、企業は何を整えなければならないのか。日本オムニチャネル協会で専務理事を務める林雅也氏と、同協会理事であり、小売・ECの実務に長年携わってきた逸見光次郎氏に聞いた。
ecbeing 代表取締役社長
一般社団法人
日本オムニチャネル協会 専務理事
林 雅也氏
CaTラボ 代表取締役
一般社団法人
日本オムニチャネル協会 理事
逸見光次郎氏
今の空気感は「Amazonエフェクト」と似ている
──AIが買い物を代行する「エージェンティックコマース」が注目を集めています。
林:AIが商品を探し、比較し、場合によっては購入まで担う「エージェンティックコマース」は、2026年1月にニューヨークで開催された「NRF 2026: Retail’s Big Show」で、Google CEOのサンダー・ピチャイ氏が、AIエージェントによる購買を支えるオープン標準「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表したことで、一気に注目を集めました。ただ、ここで思い出したいのが、約10年前の「Amazonエフェクト」です。当時も、「小売はAmazonにすべて置き換わるのではないか」と言われました。「エージェンティックコマース」においても、小売やEC事業者が淘汰されてしまうのでは?という議論が巻き起こっている様子を見ても、当時の状況や議論と本質的に似ているような印象を受けます。
図1 エージェンティックコマースの幕開け
逸見:実際、「Amazonエフェクト」で消滅の危機にさらされた業態もありました。特徴的なのは、街の書店や総合カタログ通販、家電販売などでしょうか。大きな影響を受けましたよね。一方で、すべての小売がAmazonに置き換わったわけではありません。
明暗を分けたのは、「どこで買っても同じもの」を売っていたかどうかだと思います。価格、在庫、配送の早さだけで比較される商品は、利便性に優れたAmazonのようなプラットフォームに集約されやすく、取って代わられやすかったんです。けれど、接客や品揃え、空間、コミュニティといった独自の体験を持つ企業は、むしろ強さを発揮しました。
林:まさに「均一化の罠」です。接客の質、商品の質、価格などの、どの要素にお...


