購買起点で描く、新しいマーケティングの地図 顧客理解の先で“買われ方”をデザインする

公開日:2025年12月02日

    認知を取っても、話題になっても、売れない──。多くのブランドが直面するこの課題に対し、いま注目を集めているのが「購買起点」でマーケティングを再設計する発想だ。購買データやリテールメディアの活用が進むなか、企業は“買われ方”をどう捉え、どう設計すべきなのか。カルビーリテールサイエンス部とキリンビールの営業企画部門、それぞれ購買データを起点に戦略を描く現場で、共通していたのは「顧客理解で終わらせない」姿勢だった。購買データの解像度が高まる今、“マーケティングの地図・再設計”テーマに議論した。

    「認知はあるが、売れない」は今に始まったことなのか?

    ─「認知はあっても購買につながらない」という課題、増えてきた感覚はありますか?

    松永:正直なところ、昨今急激に直面するようになったかと聞かれるとそうではなく、前からその課題は存在していたと思っています。ですが、「認知」と「購買」が分断されていると感じた事例は直近ありました。それが、当社の2ブランドで同じタレントを起用し、テレビCMを打った施策です。社内でも大きな注目を集め、営業現場でも期待値が高かったのですが、蓋を開けてみると成果の出方に違いがみられました。あるブランドは明確にリフトが見られた一方で、片方はあまり変化が見られなかったんです。同じタレント、同時期の放映、そして同時期の売り場強化という条件下でも結果が違った背景は、「購買層の違い」だったんです。これまで“テレビCMを打てば売れる”、言い換えれば“認知があれば売れる”とされてきた構図が崩れていることが明らかになった事例だと捉えています。

    ─キリンビールはいかがですか?

    横山:松永さんの言う通り、私もこの課題は今に始まったものではないと思っていますね。ですが、広告投下量と購買成果の相関関係を語るには、複雑性を増してきたのが今の状況だと捉えています。たしかに従来は、新商品発売時にはテレビCMで認知を取り、同時に店頭露出を増やすというのが長年の成功パターンでした。ところが最近では、同じ打ち方をしても売れる商品とそうでない商品が明確に分かれてきた印象です。

    その理由は、生活者の情報環境と市場構造の変化にあると分析しています。スマートフォンの普及で、生活者1人あたりの情報接触量は爆発的に増えましたし、SNSや動画配信など「接点」が多様化しましたよね。それに加えて、消費者の価値観も細分化し、画一的なメッセージが届きにくくなったのだと思っています。同時に、可処分所得の使い道も多様化し、エンタメやサブスク、体験型消費など、商品以外への支出が増えている……。お客さまの“時間”も“お金”も、取り合いが激しくなっている中で購買に至るハードルは、相対的に上がっていると思います。認知を取ること自体が目的化しているケースもありますが、本来は“知ってもらう”ことではなく、“買って...

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