認知獲得や話題化だけでなく、その先にある購買などの行動変容を目的とした企業イベントが増えている。そんな潮流を踏まえ、今回の対談ではデザイン心理学者の日比野治雄氏、カプコンプロデューサーの牧野泰之氏の2人が登場。日頃からそれぞれの領域にて“人を動かす”ことについて考えている2人に「イベントにおいて、この商品やサービスを買いたいと思わせるための仕掛けづくり」と「イベント企画を一過性の盛り上がりで終わらせないために必要なこと」を考えてもらった。
驚きを超えた「好き」が買いたいをつくる近道に
──今回の座談会では、広告や販促ではない領域で日々業務にあたられているお2人にお話を聞こうと思います。普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
日比野:デザイン心理学を専門としている日比野と申します。元々は知覚心理学の基礎研究を行っていたのですが、所属していた千葉大学教養部の廃止に伴う1994年の工学部工業意匠学科への異動を機に、心理学の視点から“よいデザイン”を目指すデザイン心理学の領域を開拓してきました。具体的には、現在はデザイン心理学的視点からの総合的なコンサルティング業務を行っており、対象は照明デザインやパッケージデザインなど多岐にわたります。最近は、2024年に発行された新紙幣の判別性におけるデザイン的側面に関わる業務にも携わらせていただきました。
牧野:カプコンプロデューサーの牧野です。私は空間デザイナーとしてキャリアをスタートし、マーケティングコンサルや広告制作会社を経て、今に至ります。ゲームを開発するだけでなく、会社全体を横断するようなWebサイトの構築やイベントも手掛けることが多いですね。
──今回の対談テーマは、広告外の領域で行動を促す方法を考えている人たちが「イベント・ポップアップストアで買いたくなる体験をどうつくるか」です。お2人は最近“商品を買いたくなる体験”はありましたか。
牧野:純粋に心が動いた話だと、ゼスプリインターナショナルジャパンの「キウイブラザーズ」の長尺CMですね。CMの映像としての楽しさだったり、「キウイブラザーズ」のかわいさだったりに魅了されて、いつの間にか果物売り場に足を運んでいる自分がいました。これまで、果物は実家にあるものでしかなく、自分で果物を買うことはほとんどありませんでしたが、やっぱり「おもしろい」「かわいい」「このキャラを好きになっちゃった」などの感情は強いなと感じた事例ですね。
日比野:牧野さんがおっしゃっていたように「消費者に企業・ブランドを好きになってもらう」ことは...
