データで見えた“環境配慮は「買う理由」になる” CCNCがつくる、購買を動かす新・販促モデル

公開日:2025年12月26日

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    日本総研が運営するCCNC(チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム)は、環境配慮と販促の両立を実現するべく、日本を代表する企業とともに新しい“買われ方”のモデルづくりに挑んでいる。
    2025年は、関西2府2県と横浜市の小学生53万人を対象に企画を実施。子どもの気づきが家庭での会話となり、その会話が店頭での商品探索、さらには購買の増加へとつながるという従来の環境施策では起こり得なかった行動の連鎖が確認された。
    CCNCが3年間取り組んできたのは、“教育→家庭→店頭→購買”へとつながる導線を設計し、環境配慮と販促が共存する新しいモデルの実装。「環境配慮がモノを買う理由」になる社会をつくるための取り組みを聞いた。

    教育→店頭の流れはつくれる 3年で答え合わせができた

    ─まずは、3年目となった今年のCCNCの活動を振り返ります。過去2年と比較して、どのような成長を感じていますか。

    前田:参画企業の本気度がますます増してきている印象をうけますね。CCNCは、メーカー・流通・脱炭素ソリューション企業・自治体・教育機関が一丸となって、「販促」と「環境配慮」の両立や、脱炭素が生活者の買い物の場で行動変容を促す理由になることを目指して活動してきました。過去2年は、私たちが主導して動くことが多かったのですが、3年目は自治体も企業も「自分たちもこうしたい」と主体的に動いてくださる場面が増えましたね。“脱炭素”や“環境配慮”を「モノを買う理由」にするために、一緒につくっていると感じた1年でした。

    佐々木:たしかに最初は私たちも試行錯誤で。参画企業のご協力を得ながら、実験と検証を重ねてきました。でも3年目の今年、脱炭素や環境配慮が販促につながるということの、答え合わせができてきたと感じています。商品にプリントされているエコラベルを通じて児童の環境問題に対する啓発教育をしつつ、児童の周りの大人の意識・行動変容への波及や、企業・商品の脱炭素の取り組みに対する理解・認知向上を図る。そして、即効性のある結果だけを求めず、体験機会を次の学びと行動につなげ、意識と行動の変容の定着ループをつくる――。この仮説の検証が、データをもとにようやくできてきました。よく“ホップ・ステップ・ジャンプ”と言いますが、3年間やってきて、やっと“ホップ”が完了したかな、と。次は“ステップ”できるように取り組んでいくフェーズだと思っていますね。

    ─2025年度は、関西2府2県と横浜市の小学生約53万人に「エコラベルを探す自由研究キット」を配布されました。

    中島:今年は“夏休みの自由研究”と掛け合わせて、「家の中やお店で、商品にプリントされているエコラベルを探す」という課題を小学生に出しました。自治体や教育委員会とも連携し、配布を進めたという次第です。

    喜多野:単に学んで終わりではなく、子どもの行動が家庭や売り場につながるように設計しているのが特徴です。子どもたちは「エコラベルハンター」として、家庭や小売店頭で見つけたラベルをデジタル上の特設サイトに登録していきます。つまり、「どこで商品を見つけて、実際に買ったのか」を参画企業も把握できるようにしました。

    前田:「エコラベルハンター」企画で狙っていたのは、“学校で知る→家庭で話題にあがる→家でエコラベルを探す→家になければお店に足を運ぶ→購入する”という一連の流れを生むことです。配布キットには、どのエコラベルを探すのか、どの企業の商品に付いているかなどを、あえて“子どもが自分で探したくなる形”で載せています。エコラベルは企業にとって環境対応をユーザーに伝える重要な存在ですが、普段の生活の中ではどうしても意識されにくい。“知って、探すという行動”を通じて、自然に店頭に行く理由が生まれるよう設計しました。

    佐々木:子どもがラベルを探すことによって、家庭で「これうちにある?」「お店に行こう」という会話が自然に生まれるはずです。今年はキット配布から、店頭での探索まで、ひとつの“導線”として機能したことがデータでもわかってきました。

    「環境配慮」は買う理由になる 参加者の購入額が倍に

    ─「エコラベルハンター」企画の効果はどうでしたか?

    前田:結果として、365社の商品パッケージの登録が確認できました。登録数が多かった企業もランキングでまとめています()。上位にはCCNC参画企業のほか、店頭でよく目にする商品を展開する企業も多くランクインしました。各社が脱炭素に取り組んでいること、そしてエコラベルの認知獲得の成果が可視化されたと思っています。

    図 エコラベルハンター企画で調査された企業ランキング

    *エコラベルハンター企画:約19種のエコラベル(カーボンフットプリント(CFP)を含む)を探索する企画
    *全365社が児童によって調査された
    *CCNC参画企業のみ企業名を明示

    喜多野:小学生を対象にした自由研究の時期に合わせてCCNC参画企業であるスギ薬局、万代にご協力いただき、キャンペーンも行いました。これが“環境配慮がモノを買う理由”になり得ることを証明する1つのファクトになったと考えていますね。

    佐々木:具体的に、スギ薬局ではアプリ上のクイズキャンペーンとして、顧客へのアンケートやPOSデータによるセグメンテーションを通じて、顧客行動理解と有効施策の発見につなげるものを実施しました。また万代では、全169店舗にて8月の1ヵ月間でマストバイキャンペーンを展開しました。アンケート調査から環境配慮意識を把握し、POSデータも合わせて顧客行動理解につなげています。POSデータと紐づけているので、「環境配慮」や「エコラベル」を理由にキャンペーンに参加し、実際に買っているのかを把握できることが大きな特徴です。

    前田:キャンペーンにともなって、CCNCの参画企業商品はPOPを付けて店頭訴求を行っています。学校や家で見た配布キットのビジュアルと同じにすることで「探していたものだ!」と店頭でもすぐに見つけることができるよう工夫しています。

    ─実際に、売上への効果はあったのでしょうか。

    佐々木:定量で見ても、明確に行動変容の結果が出ています。たとえば「どこでエコラベルを見つけたか」というデータでは、「エコラベルハンター」に参加した4分の3が“家では見つけられなかった”と回答していました。つまり、エコラベルを探すために、店頭に出向いた子どもが圧倒的に多いということです。これは単なる“啓発”ではなく“送客・行動促進”が実際に起きた証拠だと考えています。

    前田:また、売上へ貢献したといえるデータも得ることができました。エコラベル付き商品を対象としたキャンペーンの参加者は、非参加者と比較して対象商品の売上が倍増。購入点数の観点においても、キャンペーン参加者は、非参加者よりも27pt多い結果になりました。「環境配慮がモノを買う理由」になることを証明する大きなファクトだと感じています。

    「できないからこそチャンス」来年はID-POS活用拡大

    ─最後に、3年間活動されてきて、「販促」と「環境配慮」の両立は可能だと思いますか?

    前田:両立は可能だと思うし、むしろ“やらないといけない”と感じています。日常の買い物で脱炭素に触れるのがCCNCであり、「みんなで減CO2プロジェクト」です。今年の取り組みでもエコへの意識の高い人だけではなくて、「ちょっとやってみよう」と動いてくれる生活者がいるとわかりました。環境配慮が“購買理由”になる世界に一歩近づけたのかなと思っています。

    佐々木:環境配慮と販促の両立、みんなができないと思っているなら、それはチャンスだと思っています。「環境配慮」と「販促」は企業にとってどちらも実現しなければならないことですが、まだ確立していない領域です。ですが今回、環境配慮と購買がつながるデータが見えたことで、着実に前へ進んだと思いました。次年度はさらに展開する自治体を広げ、万代やスギ薬局だけではなく、他業態、他小売チェーンなど連携範囲を広げて分析することを検討しています。ID-POSで“環境が売れる理由になる”ことが見えたので、来年はもっと精緻に、「どんな生活者が、どんな理由で環境配慮商品に反応するのか」まで明らかにしたいです。3年でホップが終わったとすれば、次はまさに“ステップ”の年。着実に前に進む取り組みを進めていきます。

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      株式会社日本総合研究所 創発戦略センター グリーン・マーケティング・ラボ

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