企業からの一方的な発信ではモノが売れにくくなっている近年、「PR」を通して企業やブランドに共感をつくり、好きになってもらい、商品を購入してもらう流れが重視され始めている。購入の先で、生活者による好意的なUGCを生み出すことも、当たり前に戦略として行われるようになってきた。では、「PRを起点に“売れる状況”をつくるために意識すべきこと」とは何か。PRを専門とするプランナーである電通の辰野アンナ氏とGO(The Breakthrough Company GO)の小田切萌氏が議論する。
PR思考でファンの熱を高め“売れる状況”をつくりだす
──近年、企業が一方的に発信するだけではモノが売れにくくなっていると語られることが増えました。PRプランナーとして、今の生活者との関係性をどう捉えていますか。
辰野:少し前までは“広告嫌い”といった言葉も見かけましたが、それを受けて、広告でも「世の中とのブリッジ」を意識した企画が増えているように感じますね。企業や商品主体の企画ももちろんありますが、個人的には生活者の共感が得られるものをつくりたいと思っている人がほとんどだと思いますし、世の中のプランナーも同じように考えているのではないかと思います。
小田切:世の中とのブリッジや共感を意識した企画が増える一方で「お金を払えば広告を飛ばせるシステム」も増えていますよね。以前は広告を見てからコンテンツを消費することが当たり前でしたが、「広告を消す」という選択肢が増えて、広告や企業からの情報発信との付き合い方が選べるようになったのは大きな変化だと思います。ここでPRの仕事として重要だと思っているのは、消費者に「この企業からの情報は受け取りたい」と感じてもらうことです。広告視聴を取捨選択できる時代だからこそ、生活者のみならずステークホルダーとの良好な関係を築くための「PR」思考の重要性が増しているのかもしれません。
辰野:たしかに。企業やブランドに共感し、好きになってもらうためのコミュニケーションは増えていると思います。私自身も、2024年と2025年に開催した王子ネピアの「ネピア鼻セレブティシュ」のイベント「愛でたい鼻展」に携わらせてもらいました。これは、ブランドの世界観や歴史を体感できるブランドテーマパークとして実施した企画です。「鼻セレブ」ファンだという参加者の方もいて、PRイベントでブランドファンを可視化して熱を高めることも重要なコミュニケーションだと感じましたね。今の生活者は「安いから」「高性能だから」などの機能的価値と同じように、「好きだから」という情緒的な理由で商品を選ぶことも増えています。購入の選択肢に「好き」が入っていることを考慮すると、PRを起点にファンの熱を...
