企業と社会との良好な関係を構築・維持するためのコミュニケーションであるPR=パブリックリレーションズ。モノが売れにくくなっていると言われる今、「PR」によってブランドや企業への好意を醸成し、販促につなげる動きも見られている。拡張する「PR」の役割と、販促との関係性について、HASHI代表の橋田和明氏が語る。
2025年は、HANAの年だったと言っていいでしょう。急に何の話かと思われるかもしれませんが、まずHANAの事例から販促とPRの関係性を考えてみようと思います。
HANAの事例から販促とPRを考える
彼女らはオーディションプロジェクト「No No Girls」を通じて注目を集めてデビューし、日本レコード大賞を受賞したアーティストです。世代を超えたファンを形成しており、実は私自身もファンクラブに入り、推しています。
彼女たちの卓越したパフォーマンスと存在こそがヒットの大きな理由であることは間違いありませんが、この現象を販促視点で見てみると、「応援消費」や「推し消費」などの言葉が浮かび上がってきます。
HANAのファンは、最初から「完成されたアーティスト」を求めていたわけではありません。デビュー前の葛藤や選択、成長の過程を見守り、応援してきた。その延長線上で、音源を聴き、ライブに足を運び、グッズを手に取っている。つまりここでは、「欲しいから買う」より先に、「応援していた」という関係性が成立しています。
ここで重要なのは、“応援がそのまま消費に置き換わった”という単純な構造ではない点です。消費者にとっては応援すること自体が参加であり、意思表示であり、誰かと共有したくなる物語になっています。その物語の中で、自然と「買う」という行動が生まれているのです。この構造は、従来の販促領域にある言葉だけでは説明しきれません。ここで発生しているのは、応援という感情が個人の内側で完結せず、集団的に共有されている状態です。そして、その共有された考え方が、「選ぶ」「買う」という行動を正当化し、後押ししていると考えられます。
ここに、従来の販促領域を超えた、新たな駆動力を見ることができます。売ろうとした結果ではなく、「買いたいと思う空気」が先にできていたということです。買うという行動は、その空気に自然に沿った結果にすぎません。この「空気」というところに、PRの視点が存在しています。
PRの役割とはどのようなものか
PRの定義については、国内外で様々な整理がなされています。例えば、日本パブリックリレーションズ協会が示す定義は下記です。
パブリックリレーションズは、ステークホルダーおよび社会との間で健全な価値観を形成し、継続的に信頼関係を築くための活動である。その中心となるものは、相互理解と合意形成、信頼関係を深めるためのコミュニケーションである。
広報やPRの役割を多角的かつ正確に表した定義と思います。ただ今回は、この定義をなぞるのではなく、より販促の現場に寄り添った考え方をしてみたいと思います。
図1は、カンヌライオンズにおけるPRの概念として語られたピラミッドです。ここでのPRは「認知の獲得(Awareness)」にと...

