近年、リテール業界における“顧客”のニーズや購買行動は急速に多様化している。こうした環境変化に対応し、データを起点に営業活動を再構築しているのが、サントリーの営業部門だ。POSやID-POS、AIカメラのデータを活用することで属人的な営業から脱却し、データドリブンな売り場提案へと転換を進めている。本記事では、同社の内丸研一郎氏とともに、同社と小売との“共創”の実例を見ていく。
「これからの営業は、単に商品を売るのではなく、顧客を起点にしながら、リテールと価値を共創する視点が欠かせません──」。
こう語るのは、サントリーで営業戦略を統括する内丸研一郎氏だ。同社ではここ数年、営業活動の中心を“顧客理解”に置き換えるため、小売から得られるデータを活用した売り場提案などの取り組みを進めてきた。
サントリーにおける従来の営業は担当者の経験やバイヤーとの人間関係に頼りがちな点もあり、小売への提案の根拠や効果が不明瞭なケースも多かったと内丸氏。しかし、小売現場でもPOSやID-POSの活用などのデータ活用が進み、販売データの可視化が当たり前になりつつある。そのような状況において、メーカー側にも「感覚ではなく、データに基づく説得力ある提案」が求められるようになってきたという。
その背景には、大きく2つの要因があると内丸氏は話す。具体的には、顧客嗜好の多様化と、それに伴う消費行動の変化が関係しているという。「かつてはプロダクトアウト的な発想で商品開発や売り場提案を行っていました。しかし、今バイヤーに求められているのは...