過去一年間に企業から実際に発送されたダイレクトメール（DM）を全国から募り、優れた作品を表彰する「全日本DM大賞」。37回目を迎えた今年は、応募総数712点から26作品が入賞を果たした。上位入賞作は「戦略性」「パーソナライズ」「データドリブン」などのキーワードを体現する作品が目立った。最高賞のグランプリをはじめ、特に高い評価を得た3作品を紹介する。

金賞（グランプリ）
ねぎらいの気持ちを込めてテンキーチョコDMを送付

テンキーチョコで、上場企業の決算疲れをfreee！



箱の外観は、チョコをかけたようなデザインにして、受領時のインパクトを高め開封率を向上させた。チロルチョコの天面に数字や記号のシールを貼ってテンキー風に仕上げた。

• 広告主：freee
• 制作者：フュージョン

クラウド型会計ソフト「freee会計」は上場企業による利用も多いが、個人事業主や中小企業のみに特化していると認知される傾向にあった。この認知を覆すべく、本決算業務を終えた上場企業の経理部に向け、DMを送付した。

上場企業は四半期ごとの決算に加え、決算月には本決算を行う。今回のDMでは本決算業務が終わったあと、上場企業の経理部員が一年で唯一気が休まるタイミング（決算開示後＝決算月3カ月後）に、ねぎらいの想いを込めて箱詰めのチロルチョコを送付した。

会計ソフトのリプレイスは3～5年周期であり、すぐに導入になるわけではない。そのため、将来のリプレイス時に経理責任者になっている可能性がある経理部全員に対して、印象に強く残るクリエイティブを意識した。

DM形状は箱型で、その中に経理部員が業務でよく目にしている「テンキー」を模したチロルチョコを詰めた。チロルチョコにした理由は、限られた予算のなかでも、経理部全員へ配れるだけの数量が確保できることから。また、チョコレートは差し入れアイテムとしても馴染み深いためだ。

DM送付後にフォローコールを行ったところ、通常のコールドコールに比べ接続率が高くなり受付突破率は5倍以上、DMの認知率は50％超という非常に高い結果となった。「チョコを送りました」というフレーズを伝えると相手の反応もよく、与信があがるとともにそれがフックとなり状況確認（ヒアリング）につなげることができた。

今後は今回の施策で得た知見やデータなどを参考にしながら、ほかの部署でもDMを展開していくことを検討している。



同梱冊子にはfreeeを利用している上場企業のロゴを記載し、上場企業の利用の多さが一目でわかるようした。

金賞（審査委員特別賞実施効果部門）
家族みんなで完成させる世界でただひとつの旅の物語

ストーリー イン ハワイアンズ


• 広告主：常磐興産（スパリゾートハワイアンズ）
• 制作者：シスク

3世代ファミリーのリピーターに向けて、7・8月の宿泊プランを提案。価格訴求ではなく、ハワイアンズへの旅行前から旅行のあとまで楽しめ、思い出として長く残してもらえるDMを目指した。

封筒はエアメール風にして、楽しさと旅の非日常感を演出。同梱した冊子は、記載された指示に沿って子どもが書き込んだり、ハワイアンズの入場券を貼ったり、施設内でスタンプを押したりしていくことで、主人公になった気分で世界にひとつだけの物語を完成させていくことができる。DMからの予約者数はコロナ禍前2018年の70％まで回復し、前年度を上回った。

銀賞
送付タイミングの工夫と訴求内容の絞り込みで、新規利用者が拡大

「話題のAmazonネットスーパー」利用促進DM


• 広告主：アマゾンジャパン（Amazonネットスーパー）
• 制作者：フュージョン、ディーエムエス

Amazonネットスーパーの初回利用を促すため、DMを活用。デジタル動画広告によってAmazonネットスーパーの認知が拡大したタイミングでDMを送付し、サービス利用を訴求した。

一度に多くの情報を与えると顧客が混乱してコンバージョンが低下する傾向を鑑みて、ストアごとにクリエイティブをカスタマイズし、魅力的な商品を視覚的にアピールするなど、各ストアの特徴を訴求した。DM送付直後の週から、新規顧客のトラフィック・注文数・売上が増加した。

お問い合わせ

全日本DM大賞事務局（株式会社宣伝会議内）
www.sendenkaigi.com
TEL：03-3475-3010