スマホ+クラウド+SNSが最先端のテーマだった2010年から、時代はAI+ブロックチェーン+メタバースがそのポジションを取って代わる勢いとなった。こうした動向に目を向けながら、電通 天野彬氏が最近のSNSのトレンドを踏まえ、購買行動やそれにフィットしたあるべき販促のかたちを考察する。
2022年最も注目された生活者の情報行動が「タイパ(タイムパフォーマンス)」であることに異論はないでしょう。若年層を中心にタイパを重視したメディア接触・コンテンツ視聴が増えているといった論調は既に定着していますし、年末に発表された三省堂の「今年の新語2022」では大賞を獲得し、2022年の日経MJヒット商品番付では東の横綱が「コスパ&タイパ」でした。
これは生活者の持つ時間が有限である一方で、流通する情報量は増大し続け、そのギャップは広がり続けていることに起因します。したがって、今後もタイパを重視する流れが止まることはないでしょう。
情報行動モデル「ALSAS」
筆者は最新著『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる─ショートムービー時代のSNSマーケティング─』(2022年)において、情報行動モデル「ALSAS」を提示しました。AIDMAやAISASはよく知られたモデルですが、タイパを求める現代人は自分で情報を探すのではなくAIに探してもらうことが常態化し、情報との出会いをアルゴリズムが担うようになっていると考えられます。
TVCMのように誰もが同じ情報を受け取るAIDMAは受動態、知りたいことを自ら検索する(ググる〜タグるに至るまで)AISASは能動態であるのに対して、自分が触れたコンテンツ・気に入ったコンテンツの履歴をもとに機械が「これ好きでしょ」とお勧めしてくれるハイブリッドなあり方は、まさに中動態に他なりません(図1)。中動態については哲学者の國分功一郎氏がここ数年の著作の中で詳述していますが、AIやアルゴリズムが重要性を増す時代のアクチュアルな考察だと感じています。
このALSASモデルに当てはまるかたちで、私たちの購買行動に影響を及ぼしているのが「TikTok売れ」と言えるでしょう。それはどんな機序で起こるのでしょうか?
「TikTok売れ」から導かれる法則
冒頭の話材に紐づけると、TikTokが起点となってヒット商品が...