北部九州を中心に展開するホームセンター、グッデイ(福岡市)。同社ではDX、販促のデジタル化を社長自ら主導している。代表取締役社長の柳瀬隆志氏に、これまで進めて来たDXの効果について聞いた。
接客の量は減り、質は上がった
──緊急事態宣言が解除され店頭に人が戻りつつありますが、コロナ前とでは消費者の心理が変化しています。今後の店頭の役割をどのように考えていますか。
私たちは元々、体験の場として店舗を重視していましたので、店舗内でワークショップを行っていました。しかし、今の状況を考えると、ワークショップは難しいと中止。そういった状況下なので、店頭における体験の基準も変わってきていると考えています。
大きな点としては、感染症の防止が店頭でなされているかということ。感染防止策をしっかり行っていることが、お客さまの店舗選びにおける新しい基準になったのではないでしょうか。
そういった対応の中では、私たちホームセンターの新たな役割も発見しました。当社は緊急事態宣言が発令された時から自社の商品を使ったアクリルパネルや飛沫防止シートを設置。すると、来店したお客さまから、そのやり方を真似したいというお問い合わせが多くありました。材料をその場ですぐ買って帰ることができるので、ホームセンターは災害対策の拠点、といった側面があるのだなと。
とはいえ、お客さまと店員のコンタクトの時間はなるべく少なくしたいので、そういった感染症防止ツールのつくり方をウェブに掲載しました。設置のための画像素材も、著作権フリーにして配布しています。現物を見られる店舗の良さと、情報を詳しく知ることができるデジタルの良さ。これらを両立できるような店舗にしています。
このように店頭でのコミュニケーションは減らしているのですが、質はすごく上がっていると感じます。現場社員のやる気が非常に増しているのです。感染防止を進めて、緊張感がある中でお客さまの困ったことに応えるため、喜んでもらえて頼りにされることに仕事の意義を実感しているのです。そのため社員たちには強い使命感が芽生えています。そういった点でも、店頭の体験における質が変わっていると思います。

店舗
店舗内で展開されている感染防止ツールはウェブ上で公開。対策の案内掲示物データ、フェイスシールドの作成方法などを無料でダウンロードできる。それにより店頭での接客時間を減らした。
タイムリーなデータ分析が重要
──以前から進められてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)。コロナ禍に、どのように役立ちましたか。
当社の場合、ツールとしては、メールやカレンダー、ドキュメントを法人で活用できるグループウェアサービス「G Suite(ジースイート)」と、BI(データ可視化)ツールの「Tableau(タブロー)」をメインで使っています。今回、特に役に立ったのがG Suiteです。2015年から使っていますが、そのおかげで従来行っていた店長会議の資料100枚を100人分印刷するようなことがなくなったのです。さらに会議の進行、予定調整もオンライン上でしやすくなりました。
また、社員同士のコミュニケーションの質が高まった点も。気になることはチャットでやりとりするようになったので、誰が誰に対してどのような話をしたのかということも可視化されたのです。後で見返すこともでき、思い出す必要もないため、円滑なコミュニケーションが生まれました。
──データ分析はどうでしょうか。
データ分析は、これまでもTableauで行ってきましたが、コロナ禍でよりBIツールの大切さを実感しました。というのも、業務上の様々なデータがすべてクラウド上のデータベースに入っているので、自宅からデータにアクセスすることができます。この数字が見たいから会社に行く、誰かにデータを出してもらわないといけない、といった煩わしいことが起こらないのです。
この状況で...