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デジタルとの相乗効果 接客の最前線

店舗の価値を高める人づくり

  • 坂田隆文氏(中京大学 総合政策学部)

実店舗でも接客には欠かせない「人」。時に来店客にとっては、店舗の良し悪しを決める要素ともなる。ここでは、店舗自体の価値を高めるための人づくりのポイントについて、中京大学の坂田隆文教授が解説する。

人材が左右する小売業の差別化

メーカーや問屋から商品を仕入れて消費者に売る。小売業の業務を一言で表すなら、たったこれだけに尽きてしまう。もちろん実際にはこれほど単純な話ではないわけだが、この業務の恐さは、消費者の立場に立った際、同じ商品を購入するのであれば価格が最も分かりやすい評価基準になってしまうということにある。同じ商品を購入するのであれば安く売られている店の方が良い。消費者にそのようにのみ思われてしまっては、小売業は利益を削った価格競争に陥るより途はない。

そのため、周知のとおり、差別化戦略のひとつとして大手チェーンなどはPB(プライベートブランド)を取り揃えることによって他社との違いを出そうとしてきた。もちろん、PBによって差別化を図るのが悪いわけでも間違っているわけでもない。しかし実際には、多くの小売業はPB開発が行えるほどメーカーに対してパワーを持てているわけではない。また、PBだけで店舗を成り立たせるということは現実的には不可能だったりする。

では、どうすれば良いのか。日本においては、古くは呉服屋が百貨店へと転換したように、業態開発というかたちで他社との差別化を図るなどの手段もとられてきた(崔・岸本編著『1からの流通システム』碩学舎)。

しかし、業態開発ともなると、これまた単店舗運営を行っている小売業者や、既に業態として確立してしまっている小売業者にとっては容易なことではない。そのため、個々の小売業者が「店」そのもので差別化を図れないか、もっと大げさにいうならば、消費者に「他の店より高くてもこの店で買いたいんだ」と思わせることができないかと、苦心しているに違いない。

「店舗の価値を高める」というのは、小売業者にとってこれほど困難で、かつ、重要なことはないだろう。そこにはもちろん、システム面やビジネスモデルの側面からの手法も存在しようが、本稿では、「人」に焦点を当てて「価値ある店づくりを行える人材はどうすれが育つのか」という問題を考えてみたい。なぜならば、小売業界における人材とは、企業の競争力の源泉ともなる店舗そのものの良し悪しを左右する存在ともなりうるからである。

教え、育てる…のか?人づくりにおける大きな間違い

では、価値ある店舗を生み出せるような人材をどのように教育すれば良いのだろうか。特に、若手~ミドル層の人材育成において何が重要なのだろうか。この問題を考えるために、まずは卑近な例であるが、私が教鞭をとっている大学で常々学生に問いかけている質問にふれてみたい。

学生に対して「教育とは『教える』と、もうひとつは何だと思う?」と質問をする。するとほぼ100%の学生が、「『育てる』です」と回答する。そこで学生には、「教員に教えてもらって育ててもらう、というのは全部受身な考え方ですよね。そこで『育つ』という主体性をもった答えを思いつくことはできませんか?」と指摘する。教員が「教える」ことをしたならば、「育つ」ということくらいは学生自らがしなさいと伝えると、多くの学生が多少なりとも姿勢を正してくれる …

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来店客の利便性向上や満足度向上のため、実店舗でのデジタル活用はもはや当たり前に。AI(人工知能)やロボットなどテクノロジーを活用した業務の効率化も日々進んでいる。しかし、いかにテクノロジーが発展しようとも、実店舗における「接客」には「人」にしか生み出せない大きな価値がある。では、どのように「接客」の価値と店舗のデジタル化をかけ合わせていけばいいのか。本特集では、実店舗でデジタルを活用・推進しながらも、「接客」の価値も高めている事例について紹介する。また、これから現場で求められる人づくりや接客についてもみていこう。