人口約7万人の佐賀県鳥栖市をホームタウンに持つサガン鳥栖。5月には、来場者自身が試合観戦後にチケット代を決める「一夜限りの『値段のないスタジアム』」を実施し、話題を集めた。今シーズンは過去最高の平均観客数を記録する見込みのサガン鳥栖は、いかにファンの心をつかんだのか。

サガン鳥栖はことし、創設20周年を迎えた。11月18日に開催されたFC東京との20周年記念マッチでは、当日限定の記念ユニホームをを配布。通常はブルーやピンクのユニホームだが、濃いめのグリーンに迷彩柄をあしらった。選手も同じユニホームを着てピッチに立ち、みごと勝利を勝ち取った。
選手の声がクラブを刺激、集客アイデアにつながる
サガン鳥栖は、5月27日に本拠地ベストアメニティスタジアムで開催された2017明治安田生命 J1リーグ第13節、コンサドーレ札幌戦で「一夜限りの『値段のないスタジアム』」を実施。来場したファンが、試合の内容に応じて自ら決めたチケット代を試合後に支払うイベントだ。当日の総観客数は1万4416人。そのうちイベントでの来場は5260人だった。支払われた総額は456万8215円、平均投入金額は812円だった。
その背景には、集客に成功した次の試合は、逆に集客に苦戦するという課題があった。現在のクラブ運営会社「サガン・ドリームス」の社長を2011年から務める竹原稔氏は「年間3試合くらい観戦しようという人がイベントに合わせて来る。年間を通じて毎試合見るのは、スケジュールを合わせることも大変」とその理由を分析する。
直前のホームゲーム、横浜F・マリノス戦では、ここ数シーズン恒例の「レディースデー」を開催した。来場者には記念ユニホームや応援グッズをプレゼントし、収容人数2万4130人に対して、2万1245人を集めた。5月27日の試合は、あらかじめ集客面で苦戦することがわかっていた。
「選手からは『プレゼントがないと試合に来ないのは悔しい』という声がありました。クラブとして、何かチャレンジしなければ、という意を強くしました」(竹原氏)
当初は、無料招待券の配布も候補に挙がったものの、「チケット代はゼロでも良いが、単なるバラマキではないアイデアであるべき」と、今回の企画を実施することになった。
対象としたのは、ふだん自由席として販売している4つの席種。販売にあたって、オフィシャルショップや指定のグッズ販売店へ出向き、氏名や連絡先を記入し、身分証明書を提示することを条件とし、来場意欲の高い人を集めた。
「6942人が購入して5260人が来場した。無料招待券を7000枚配っても、来るのは1000人くらいではないか」(竹原氏)
加えて、試合の直前には所属選手の結婚や子どもの誕生などを発表し、偶然のタイミングで起こった慶事もファンがお金を払いたくなる雰囲気作りを後押しした。
チケット代は、入退場口に設置したボックスに入れる仕組み。このボックスは4つの側面がデジタルサイネージになっており、選手の画像などを映して視覚効果の高いものを採用した。
平均価格の812円も金額だけを見ると少なく感じるが、スタジアム全体の平均価格が2300円、イベントで対象とした席の、元々の価格設定が低いことを考えると、悪い数字ではない。新規で来場した観客は、グッズや飲食でも収益を残している。北海道のチームとの対戦で、アウェイサポーターの来場が見込めないなか、開幕戦の来場者数を超え、開催時点でシーズン2位の動員に成功した。
6942人の購入者には、販売時に入手した個人情報をもとに、試合後ほどなくダイレクトメール(DM)を送り、イベントのお礼と結果を報告。以降のイベント開催時にもDMを発送している。現在は、この来場者情報を、新規や観戦経験の有無、参加理由などで分類し、それぞれへのアプローチ方法の検討が課題になっている。
地域ファンをセグメント スタンドごとの満足度を追求
短期的な課題はあるものの、竹原氏が就任した2011年以降の観客動員数は好調に推移している。竹原氏が就任したころは、無料招待券で集客していたというが、観客動員は思うように伸びなかった。「このままでは経営的にも厳しくなる」と、大きく方針を転換したのが奏功した。
実施したのは、スタジアム内のファン層をセグメント(区分)し、それに合わせてスタジアム内の座席も整理して、それぞれのファンの特性に合わせて値段も設定し直した。
最初に手を付けたのは、見やすく、雨に濡れない場所で待たずに試合を見たいファンが集まりやすいメインスタンドとバックスタンドの指定席。次に熱狂的なファンが集まるゴール裏の満席を目標に、と、エリアごとに段階的に対策を取ることで、固定客を増やしてきた ...