ここでは、最終審査員・一次審査員による応募企画全体の講評を紹介します。
講評
最終審査員

博報堂ケトル
代表取締役社長/編集者
クリエイティブディレクター
嶋 浩一郎氏
インサイトを捉え、人を動かすレベルの高いアイデアが競い合った審査会だった。数年前の審査では課題解決の手口がアプリに集中していたのだが(もちろん、現代人にとってスマホが必需品であるわけで、そのスマホを使わない手はない)、今回寄せられたソリューションの手法はフィジカルなものからデジタルなものまで多岐にわたった。これは、応募者がよりニュートラルに、あらゆる手口の中から答えを探した結果なのだと思う。
特にシルバー以上の受賞作品は、その手があったかと思わせるシンプルなアイデアでのソリューションが光った。過去の企画への既視感が垣間見れる応募もあったが、アイデア次第でまだまだ見たことのない課題解決ができると実感できた。

アサツー ディ・ケイ
アクティベーション・プロデュース本部
プランニング・ディレクター
石田 琢二氏
今回も楽しく審査させていただきました。デジタルに偏っていた前回に比べ、今回はフィジカルな領域の企画が多かったです。そして、受賞された作品は、どれもアイデアがシンプルで、一言でこんな企画と言える企画が多かったです。シンプルなアイデアで、消費者の習慣を変えていくポテンシャルを感じられるような企画もいくつか見ることができました。
さらに、企画としてどれも完成度が高かったです。何ならすぐに実施できそうな企画も多くありました。逆に言うと、アイデアはおもしろいけどここが足りないとか、ここはこうしたらいいのに…といった不完全な企画は選びませんでした。この中から実現する企画がいくつか出てくるといいなと思います。

オイシックスドット大地
統合マーケティング室室長
チーフ・オムニチャネル・オフィサー
奥谷 孝司氏
デジタルの時代に、デジタル作品ではないものが受賞作品に上がってくれたことを嬉しく思います。デジタルはあくまでも手段。どうやったらお客さまの心を動かす事ができるか?すんなりとお客さまの心にメッセージが届いているか?この点に純粋に重点ポイントをおけた今年の審査会であったように思います。
一方で今年は課題によっては審査が大変難しかった。事業会社の人間として、オリエンテーションの難しさ、課題設定によっては良いクリエィテイブはかえってこないとも感じた審査会でした。来年はどんな作品が我々審査員の心を、お客さまの心を掴むのか楽しみにしております。

刻キタル
代表取締役
クリエーティブ・チェアマン
岸 勇希氏
課題によってかなり難易度差があったように思います。考えやすい課題と、考えにくい課題。プロモーションで解決できる課題と、そもそもプロモーションでは解決しにくい課題。このコンペでは、その見極めも大切なんだと思います。「"えとりかえ"虫コナーズ」と金賞の「オテモトガム」は、共にグランプリにしたいほど、どちらも高評価でした。
「オテモトガム」は、箸袋を占拠している楊枝に着目。それをガムに置き換えるという、かなり大胆で、大きな可能性を感じるアイデアでした。実施の規模感など、課題もありますが、"未来の当たり前をつくる"という視点で、最もイノベーティブな案だったと評価しています。エントリーされた全ての方、お疲れ様でした。

プラチナム
代表取締役
ベクトルグループ
取締役
吉柳 さおり氏
まず応募作品数が3000を超えたことは、激戦の賞となり全体のレベルをあげるのでとても喜ばしいことだと思っています。その中で上位に選ばれたアイデアに共通するのは、確かなインサイトの発見ももちろんのことですが、デジタル、アナログに限らず商品を使用する、または、想起する「必然性のある体験」がシンプルなアイデアで設計されていたことではないかと思います。
たくさんの商品がコモディティ化し競合商品との差別化が難しく、リーチ重視のマーケティングコミュニケーションが効かなくなってきている中で、この「必然性のある体験」を創出するのはとても重要だと思っています。生活者がワクワクする体験装置を考えるのは企画する私たちもワクワクする、販促ってつくづく楽しい仕事ですよね。

大広
東京アクティベーションデザインビジネスユニット
カスタマープロモーション局 局長
児玉 昌彰氏
今年も多くのご応募ありがとうございました。そして入賞された皆様、おめでとうございます。若いプランナーの方々中心に熱い企画を審査させていただくのは、大変刺激的な時間です。その中で改めて感じることなのですが、どの課題を選択していくかが大きなカギとなります。課題が難しければ、『人を動かす』ハードルは当然上がります。しかし、アイデアでそのハードルを超えていくと、より大きなインパクトとなって心が揺さぶられます。
今回、施策を投じれば『人は動く』という前提で企画を語られていたものが散見されました。確かにそんな気はしますが、世の中にはたくさんのモノやサービスが溢れています。そのごちゃごちゃとした世の中で今回輝いた企画は、やはり分かりやすく一言(ひと目)で伝わるアイデアだったと思います。この販促コンペからリアルな実施がひとつでも多く、生まれることを期待したいです。

宝島社
マーケティング課課長
桜田 圭子氏
応募者の皆さま、たくさんの素敵なアイデアをありがとうございました。今回、初めて審査に参加させて頂きましたが、審査員の誰もが「これはシンプルでわかりやすい!」と評価したものが上位に入り、販促企画を立てる際の大原則をあらためて確認させて頂くことができて、個人的にも大変勉強になりました。
最終選考に残った作品のなかでも、審査員が話題にする企画と、そうではない企画が混在していたことも印象的でした。結果、話題になったものが入賞し「人々が話題にしたくなる」コンテンツであることの大切さを感じた機会でもありました。次回は協賛企業として参加して、ユニークな発想を持つ皆さんからぜひ販促のアイデアを頂きたい!と思いました。

ドミノ・ピザ ジャパン
執行役員
チーフマーケティング オフィサー
富永 朋信氏
完成度の高い提案が多数集い、「効く」とは何か、やりたくなるのはどんな企画か、といった骨太なポイントが示され、厳正なる激論を重ねた上で受賞作が選ばれた、とてもエキサイティングなコンペでした。私個人としては、アイデアはあるか、アイデアが企画として昇華されているか、実現上問題はないか、という3点を重視しました。勝ち残った企画は、同様に提供された多くの視座により、ストレステストされ、あらゆる角度から吟味された末に受賞の栄誉に輝いた猛者たち。受賞、おめでとうございます。

ハッピーアワーズ博報堂
CEO/クリエイティブディレクター、ビジネスプロデューサー
藤井 一成氏
課題に対して真っすぐに向き合ったシンプルで強いアイデアが選出されました。世の中を「動かす」ためには、消費者にとってわかりやすい施策であることはとても重要です。特にSNSオリエンテッドな"いま"、画像1枚や短いセンテンスで、送り手と受け手が情報を共有できる「伝わりやすさ」が大きな世の中ゴトをつくり出すポイントにもなっています。企画が実現した際の情景が、一枚絵で浮かぶようなリアルなソリューションが多く選出されたのも、こうした観点が反映された結果だと思います。
受賞を逃した作品の中にも、企画をシャープに削ぎ落とすことで逆にチカラ強くなるものが数多くあると感じました。アイデアのコアを突き詰めてシンプルに勝負する企画力もぜひ磨いてみてください。楽しい審査でした。みなさまお疲れさまでした。
講評
一次審査員

オリコム
企画制作本部ソリューションプランニング局
プロモーションプランニング部
井口 富義氏
企画の着眼点やストーリーの進め方、この企画で伝えたいこと、その伝え方、はたまた具現化する上で関連法規的には大丈夫かなど、企画書一本で提案を行う場合には、より一層研ぎ澄ますポイントがおのずとあると思います。また、「他人の正解」を知っていながらも、それを知った上で「自分の正解を提示する」ことも大事だと感じます。今回審査をさせていただき私自身参考になる点が多々ありました。ありがとうございました。クライアントが企画に寄せる期待はさまざまです。だからこそ、その期待を超えるチャレンジを今後もお願いします。

博報堂
デジタルビジネス推進局 エグゼキューション
デザインG インタラクティブディレクター
石毛 正義氏
企業のビジネス課題に対し、「望むべき人に動いてもらう」ための新たな価値提供ロジックとアイデアの飛距離、そして「実現性」のある企画かどうか、審査させていただきました。審査を通じて、ブレークスルーする一歩手前の企画はもったいないと感じました。
例えば"記念日"や"子供から両親へ"プレゼントすれば"○○できます"といった切り口の場合、「本当に子から親にプレゼントしてみたくなるか」検証されていない思い込み、思い付き企画も実際のところ多く、その地点から一歩も二歩も踏み込み、生活者の「感情を動かす」ような仕掛けや「継続的な関係をつくる」仕組みが一言で表現されている企画は"納得性"と"アイデアの質"ともに高かったです。チャレンジングな企画を出す思考量と勇気が必要ですね。受賞されたみなさん、おめでとうございます ...