人々との「共創」を可能にしたもの――展開性を内包した、完璧な初期設計

公開日:2025年12月26日

  • 永井一史(アートディレクター)

万博の会期が終わってなお、SNS を中心にファンの熱狂は冷めやらず、さまざまな分野の専門家が考察を続けている「EXPO 2025 Design System」。これまでの国家的な催事を見渡しても、デザインシステムそのものに人が愛着を抱き、求心力を有した例は、ほとんどなかっただろう。今回のデザインシステムのユニークネスはどこにあったのか、そしてそれはどんな未来へと繋がりうるのだろうか。

“逆風”を一変させた体験価値

思い起こせば、審査員として向き合った当初から、このプロジェクトが社会の厳しい視線に晒されていることは否応なく意識した。しかし開幕後、蓋を開けてみれば、世間の評価は一気にポジティブに転換した。「大屋根リング」の素晴らしさや各パビリオンの面白さ、何より万博全体を彩るクリエイティブが高く評価されていった。つまり会場での「体験価値」が、全てをひっくり返したと言えるだろう。

そもそも、「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマについては、「デザイン」というキーワードが⼊っていたこと自体、意義深いことであった。ただ残念ながら、この素晴らしいテーマ設定から、実際に形になり世に出るまでの過程が、世間にうまく伝わりきっていなかったようにも思う。不確定要素が多く、本来のテーマの意図を語りきれていなかった感は否めない。

私は今回、ロゴマーク、キャラクター、そしてデザインシステム、それぞれの審査を担当した。その中でデザインシステムにおける引地耕太さんの提案は、万博という特別な場が本来持っている、展開性や表現の余地を、的確に捉えて引き出した、見事...

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大阪・関西万博デザインシステム大解剖<拡大版>

「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げ、2025年に開催された大阪・関西万博。閉幕後の今もなお、その象徴的なキャラクター「ミャクミャク」を筆頭に、多くの人々に強い記憶を残しています。その熱狂を高めてきたのが、“開かれたデザイン”をコンセプトとした「EXPO 2025 Design System」の存在。そこから生まれた「こみゃく」の二次創作なども盛んに行われ、多様な人々の参加と共創を促す“生成的オープンデザインシステム”として世の中に広がっていきました。今号では、2025年8月号の本誌特集「デザインシステム大解剖」をさらに拡大。システムの中核を担った引地耕太さんと改めてその全貌を紐解きつつ、本万博にまつわるデザインやキャラクターなどの“ソフトレガシー”が、これからの世の中でどう活かされていくのか、多様な領域の専門家らとともにその可能性を掘り下げます。

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