世界のクリエイティブから読み解くキーワード

公開日:2026年7月31日

社会課題=経営課題

Purpose in Service of Business.
カンヌのCreative Effectiveness部門の審査で印象的だったのは、パーパスや社会的意義が中長期的な理念に留まらず、事業そのものの成長エンジンとなっている作品が高く評価されたことです。Pedigreeの「Cara-melo」は象徴的で、社会に良いことをすること自体がブランドの成長モデルになっていました。社会課題の解決とビジネス成果を別々に考えずに、一体として機能させること。理論では当たり前に思えても、実際のブランド戦略では見落とされがちな視点であり、改めてその重要性を実感しました。(佐々木亜悠)

気候変動はCSRから経営課題へ
気候変動を啓発したりPoCをしたりするだけでなく、企業経営そのものを守るクリエイティビティが目立ちました。象徴的だったのがM&M'Sの「Protect the Peanut」です。気候変動による収穫量減少や品質低下から原料を守るため、耐性品種の研究開発やゲノム情報のオープン化まで進め、業界全体のレジリエンス向上を目指しました。気候変動はもはやCSRやルール遵守ではなく、サプライチェーンを左右する経営課題です。クリエイティブも社会課題を語るものから、事業を守る実装へと進化していると感じました。(太田郁子)

Actions Speak Louder Than Words
今回のカンヌでは、ブランドがメッセージを発信するだけでなく、実際の行動によって社会に変化を生み出す仕事が数多く評価されていました。ビジネス面の成果だけでなく、人々の日常生活に具体的なインパクトを与えている点が印象的でした。Suncorp Insuranceの「Haven」やAXA Franceの「Three Words」は、ブランドの存在意義を具体的なサービスや仕組みとして実装し、社会的価値とビジネスにおける成果の両方を生み出した好例です。ブランドの信念は、言葉だけでなく行動として示されることで、より大きな共感や信頼に繋がることを強く感じました。(エレノア・ショーディー)

Reframing
今回のカンヌでは既存のマーケティングの延長ではなく、ブランドがこれまで持っていた価値や、直面している課題を「非連続的」にリフレーミング(捉え直し)し、システム化して「社会と繋ぎ直す」事例が多く見られました。これは単なる「大胆」なキャンペーンとは違うアプローチだと感じています。たとえばチタニウムのグランプリを獲ったSuncorp Insuranceの「Haven」は、保険会社の提供価値を転換。Creative Business Transformation部門グランプリのWikifarmer「The Wedding Rice」は、廃棄される米の課題をビジネス拡大に繋げています。リフレーミングによって、一時的な話題化を狙ったキャンペーンや単なる社会貢献事例にはならず、ビジネスインパクトを生んでいます。(佐々木康晴)

働き手不足へのクリエイティブ
世界的な労働力不足も、今年を象徴するテーマでした。ハイネケンの「The Pub That Refused to Die」は、地域のパブを単なる販促の場ではなく、コミュニティを支える社会インフラとして守る活動を展開。また、Tecateの「Welcome Back, Paisano」は、帰国したメキシコ人に雇用や研修を提供し、自社の販売網を活用して再出発を支援しました。労働力不足は事業そのものの持続性を左右する経営課題です。クリエイティブが人材戦略や事業基盤の再設計まで担う時代に入ったことを象徴するテーマだったと感じました。(太田郁子)

CreatorからCo-Creatorへ
クリエイターの役割は「アイデアを考えて提案する人」から、「得意先と一緒に共創する人」へ、着実な進化を遂げている。共創の発想なくして、センシティブな社会課題へアタックしスケールの大きなビジネス成長を得ることは難しい。(近山知史)

カンヌライオンズにおけるCxOの存在感

CMOからC-suiteへ
今年の作品に共通していたのは、クリエイティブがマーケティングの枠を超え、経営そのものを動かしていたことです。気候変動への対応はサプライチェーン戦略に、人材不足への対応は組織や事業モデルの変革に繋がっていました。こうしたテーマは、もはやブランド価値や売上だけを担うCMOの領域ではありません。CEO、COO、CHROをはじめとする経営陣全体が向き合うべき課題であり、カンヌライオンズも広告の祭典から、クリエイティビティを経営資源として議論する場へと進化していることを強く実感しました。(太田郁子)

CFOの存在感
カンヌライオンズなどでCFOの存在感は大きく増しています。その背景には、激しい市場環境の中でクリエイティブ投資が「どう事業成長やROI...

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世界のクリエイティブ 経営と社会を変革する人間の発想とAI実装

2026年も主要な海外アワードの結果が続々と発表されています。今年のカンヌライオンズでは、クリエイティビティを継続的に生み出す“組織の仕組みやカルチャー”を評価する「Creative Brand部門」が新設されたほか、あらゆる部門で経営課題と社会課題を両輪で解決するイノベーティブなプロジェクトが多数入賞しました。一方、応募者のAIの不正利用などを防ぐ健全性基準(Awards Integrity Standards)が導入され、一部の部門では「AI Craft」というサブカテゴリが新設されるなど、“AI実装時代” における表現や人間の発想とは何か、という投げかけが多く生まれています。社会におけるクリエイティブの役割が問われる中、審査員や現地を視察したクリエイターは世界のクリエイティブの現在をどう見ているのでしょうか。

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