「本で勝負する」覚悟が表れた新たな書店空間

公開日:2026年3月31日

  • 三省堂書店「神田神保町本店」

“本の街”東京・神田神保町のランドマーク的存在である「三省堂書店 神田神保町本店」が3月19日にリニューアルオープンした。ここで三省堂書店が目指すのは、「本との偶然の出会いを提供する場」だ。空間・サイン・体験を通して本との出会いを再設計したこのプロジェクトから、これからの書店の可能性を探る。

知的好奇心を刺激するさまざまなジャンルの本が広がる「知の渓谷」。フロアの両端には階段が設置されており、それを上ると「世界の展望台」へ。

「本で勝負する」という覚悟

一歩足を踏み入れると、まるで渓谷のように左右に広がる本棚の数々。ゆるやかな起伏を持ちながら空間を形づくり、来店客を店の奥へと導く。谷の底を歩くように進むにつれ、多様なジャンルの本が視界に入る。まさに本で埋めつくされた、圧巻の光景だ。

三省堂書店 神保町本店は、本の街・神保町を象徴する存在として長年親しまれてきた。2022年5月、ビルの建て替えのために一時閉店。その際に屋外広告として掲げた「いったん、しおりを挟みます。」というメッセージが話題に。再開を前提とした「しおりを挟む」という表現には、今後も書店を続けていくという強い意思が込められていた。約4年の準備期間を経て、同店は「三省堂書店 (·)(·)神保町本店」として新たなかたちで帰ってきた。

リニューアルの根底にあるのは、亀井崇雄社長の「本で勝負する」という明確な意思だ。その背景には、2022年の閉店時の記憶がある。「最終日のセレモニーには、本当に多くのお客さまに集まっていただき、たくさんの声援をいただきました。その時の光景が忘れられません。ここに必ず戻ってこなければいけない、しかも“ちゃんとした本屋”として戻るべきだと覚悟を決めました」(亀井さん)。もちろん、出版不況の影響を受け続けてきた現場として、継続への不安は常にあったという。「正直に言えば、そのまま...

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プロダクトから体験へ「本」のある空間をデザインする

出版流通を取り巻く環境が大きく変化するなか、いま書店は「本を売る場所」から、人が集い、思考を深める体験の場へと進化しつつあります。その波は個人発の小規模書店だけでなく、街の大型書店にも広がりつつあります。AIが普及した現在だからこそ、余白を味わい、没入をもたらす「本」はプロダクトであると同時に新たな思考体験を呼び起こす装置となる可能性を秘めているのかもしれません。今回は、新価値創出へと挑戦する書店のプロジェクトに着目。クリエイターの視点も交えながら、「本」のある空間づくりを考えていきます。

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