“本の街”東京・神田神保町のランドマーク的存在である「三省堂書店 神田神保町本店」が3月19日にリニューアルオープンした。ここで三省堂書店が目指すのは、「本との偶然の出会いを提供する場」だ。空間・サイン・体験を通して本との出会いを再設計したこのプロジェクトから、これからの書店の可能性を探る。
知的好奇心を刺激するさまざまなジャンルの本が広がる「知の渓谷」。フロアの両端には階段が設置されており、それを上ると「世界の展望台」へ。
「本で勝負する」という覚悟
一歩足を踏み入れると、まるで渓谷のように左右に広がる本棚の数々。ゆるやかな起伏を持ちながら空間を形づくり、来店客を店の奥へと導く。谷の底を歩くように進むにつれ、多様なジャンルの本が視界に入る。まさに本で埋めつくされた、圧巻の光景だ。
三省堂書店 神保町本店は、本の街・神保町を象徴する存在として長年親しまれてきた。2022年5月、ビルの建て替えのために一時閉店。その際に屋外広告として掲げた「いったん、しおりを挟みます。」というメッセージが話題に。再開を前提とした「しおりを挟む」という表現には、今後も書店を続けていくという強い意思が込められていた。約4年の準備期間を経て、同店は「三省堂書店 神田神保町本店」として新たなかたちで帰ってきた。
リニューアルの根底にあるのは、亀井崇雄社長の「本で勝負する」という明確な意思だ。その背景には、2022年の閉店時の記憶がある。「最終日のセレモニーには、本当に多くのお客さまに集まっていただき、たくさんの声援をいただきました。その時の光景が忘れられません。ここに必ず戻ってこなければいけない、しかも“ちゃんとした本屋”として戻るべきだと覚悟を決めました」(亀井さん)。もちろん、出版不況の影響を受け続けてきた現場として、継続への不安は常にあったという。「正直に言えば、そのまま...


