複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年4月18日

LIXILグループは、この日都内で開いた記者会見で、潮田洋一郎会長兼最高経営責任者(CEO)が5月20日付で取締役を辞任し、6月の定時株主総会後にCEOを退任することを発表した。2019年3月期の最終損益が530億円の赤字になった責任は前代表執行役社長兼CEOの瀬戸欣哉氏にあるとして、潮田氏は任命責任をとって辞任する形となった。
住宅設備メーカー大手のLIXILグループで、2018年10月以降、経営トップ人事を巡る抗争が続いています。争っているのは、創業家出身で代表執行役会長兼最高経営責任者(CEO)の潮田洋一郎氏と、前代表執行役社長兼CEOの瀬戸欣哉氏です。
本件が注目されている理由は、潮田氏と瀬戸氏の両名以外に株主である海外の機関投資家やLIXILグループに統合された旧INAXの創業家をも巻き込んでいること。さらに、経営トップ人事に関する手続きやガバナンスのあり方が問題になっていることにあります。そこで、今回はこの件を題材とし、危機管理広報のポイントを解説します。
当事者不在のトップ交代発表
騒動の発端は、2018年10月31日にLIXILグループ本社で行われた決算説明会。この場で、瀬戸氏から潮田氏へのCEO交代と、山梨広一氏の社長就任に関する発表がありました。
瀬戸氏は2016年1月に「プロ経営者」として外部から招かれ、同年6月にLIXILグループの社長兼CEOに就任。そこから3年弱しか経っていませんでした。そのため、社内でも退任に関して「不自然である」「辞める必要はない」との声が挙がっていることが報じられました。
CEOの交代案を決定した緊急の指名委員会が開催されたのは瀬戸氏が海外出張で不在にしていたタイミングでした。その5日後に開催された取締役会ではCEOの交代やその手続きを問題視する指摘もあり、「不可解な解任劇」と報じるメディアもありました …