生成AIの急速な進化は、映像制作の現場にどのような変革をもたらしているのか。MVやCMにおいて積極的にAI導入を進める高橋輝臣さんと生成AIで映画『サマー・トライアングル』(2025年)を制作した中澤太翔さんに話を聞いた。
AIとの分業体制
高橋 僕自身の広告やミュージックビデオ制作におけるAI活用は、この数カ月でもかなり変化しています。以前は企画段階のアイデア出しや壁打ち相手としての利用が中心でしたが、最近では絵コンテを描かずに、最初からAIでビデオコンテ(Vコン)をつくってしまうことがほとんど。頭の中にあるイメージを映像化して、自分で鼻歌を歌ってAIで曲にしたBGMを合わせる。そうやってほぼ完成形に近いような状態のVコンをクライアントに見せることが多いですね。プレゼンの勝率もかなり上がっている感覚があります。
中澤 自分の鼻歌からBGMまでつくってしまうというのは面白いですし、合理的ですね。私も映画制作におけるAIの活用方法としては共通する部分が多く、脚本の執筆やキャラクターデザイン、作品の骨格といった“上流工程”は人間が担い、そこから映像を生成・ブラッシュアップしていく“下流工程”をAIに委ねるというハイブリッドな分業体制をとっています。
高橋さんとちょっと異なるのは、人間の感情に深く関わる点は人に依頼をしていること。たとえば私が制作した映画『サマー・トライアングル』(2025年)では、音楽は人間の作曲家に依頼したほか、プロの声優に感情を込めた演技を当てていただきました。制作のどの部分に「人間の手触り」を残すべきか、領域を柔軟に切り分けながら設計することが不可欠になっています。
高橋 ポストプロダクションの現場でも役割分担が進んでいますね。「スタジオで撮影して背景だけをAIで差し替える」とか「実写で撮影した役者の衣装だけをAIで美術衣装に着せ替える」みたいなアプローチです。表情や芝居など、核となる要素は人間が担い、たとえば予算のかかる実写撮影など、実現ハードルの高い要素をAIで補っていくような使い方がかなり現実的になってきているのかなと。


