古びた飲食店や駐輪場、倉庫などが並ぶ、薄暗くて騒がしいイメージは過去のもの。ここ10年ほど、高架下や鉄道跡地に新たな商業施設やアートスペースが次々と生まれています。今回集まってくれたのは、小田急線下北沢駅近くの鉄道跡地に2020年にオープンした現代版商店街「BONU STRACK」のほか、旧池尻中学校跡地(世田谷区)を活用した創業支援型複合施設「HOME/WORKVILLAGE」など、数々の店舗や商業施設をプロデュースする小野裕之さん。社会の“ヴォイド”を占有し一般に解放する運動「SKWAT」を始動し、2024年には亀有駅前の高架下に倉庫とワークスペースやショップ、エキシビションスペースが共存する「SKWAT KAMEARI ARTCENTRE」をオープンした、DAIKEI MILLSの中村圭佑さん。沿線価値向上を目指した「中央線高架下プロジェクト」に中長期的に関わり、その後も「高円寺マシタ」「西荻高架下」などを通じて、ハードとソフトを融合したまちづくりに取り組む、リライトの籾山真人さん。人が集まり、地域とつながる、高架下空間の可能性を探ります。



高架下は不動産事業には向かない?
小野:元々、greenz.jpというWebマガジンで編集者やメディアプロデューサーをしていましたが、2012年に虎ノ門ヒルズの暫定利用でつくった「リトルトーキョー」という場所をきっかけに、秋田の米農家さんと「おむすびスタンドANDON」を始めたり、最近では下北線路街の「BONUSTRACK」や、世田谷ものづくり学校跡地の「HOME/WORK VILLAGE」といった複合施設をオープンしたり。気付けば店舗運営やまちづくりに仕事が広がっていきました。
籾山:コンサルティング会社に勤めたあと、まちづくりで起業したいと考えて、2008年にリライトという会社を立ち上げました。とはいえ最初から仕事があったわけではないので、まずやったのは僕の地元でもある「立川プロジェクト」。当時、確か小野さんにも来ていただきましたよね。
小野:ラジオに出ましたね。
籾山:今でいう、いわゆるエリアリノベーションのはしりで、商店街の空き店舗を借り上げたコミュニティスペースの運営と、まちづくりをテーマにした『東京ウェッサイ』というコミュニティFMのラジオ番組。そこに、小野さんをはじめ面白そうな活動をしている人たちに来てもらって。その取り組みから「中央線高架下プロジェクト」などの仕事に繋がり、最近では「高円寺マシタ」の商環境デザインや、「西荻高架下」の開発にも関わらせてもらっています。
中村:僕の活動の基盤は、DAIKEI MILLSという設計事務所と、2020年にスタートした「SKWAT」という自主プロジェクト。今は、亀有駅近くの常磐線の高架下で、ジェイアール東日本都市開発さんと一緒に「SKWAT KAMEARI ART CENTRE(SKAC)」という施設を運営しています。
籾山:僕が高架下に関わり始めた2011年当時、高架下の開発といえば、まだ都心部が中心でしたが、中央線高架下プロジェクトの対象エリアは三鷹駅~立川駅間。駅周辺を除くとほぼ住宅街のため、高い賃料で貸せることを前提にとりあえず箱をつくるといった、従来型の商業開発が成り立たなかったんです。
小野:BONUS TRACKは、高架下ではなく小田急線下北沢駅と世田谷代田駅間の地下化された線路の上部にありますが、比較的立地のいい場所に、いきなり新たな土地が現れるというのは同じですね。
籾山:そもそも、地価が高い東京にまとまった土地が新たに生まれるのは、デベロッパーにとってはものすごいビジネスチャンスなんです。高架下空間には、いまだに駐輪場だったり倉庫だったり、塩漬けになっている場所がたくさんあって。
中村:まさに亀有の高架下も、リース用プリンターの倉庫が何百メートルも続いている状態でした。
籾山:そういった背景もあって、中央線高架下プロジェクトでは、いきなり商業施設をつくるのではなくて、「誰とどんな使い方をするのか」から検討を始めました。具体的には、エリアマガジンなどのメディア運営と、地域の人たちを広く巻き込んだイベントやワークショップなど。それらを通じて、開業後のにぎわいに繋がるコミュニティと担い手づくりを目指しました。
小野:不動産事業って、土地を購入して、上物を建てて、売り抜けるというのが基本的なビジネスモデルですが、高架下や線路上部の土地は売却できないし、その事業のために仕入れた土地ではないので、損益分岐点が低いんです。さらに下北線路街の場合は、線路部分で固定資産税を払うことで、上部は非課税になるレアなケース。
中村:SKACの場合も、家賃を考慮してもらう代わりに、毎日ここにいて、投資をして、生々しい場所をつくっていく。自分たちが...

