設立50周年の原宿サン・アド カルチャー視点で1100ページ超の書籍を発刊した理由

公開日:2026年10月30日

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  • 原宿サン・アド

原宿サン・アドが10月、1160ページもの大ボリュームの書籍『drive! drive! drive!』を発刊した。設立50周年を記念したもので、「人や時代のカルチャーを読み解き、ブランドをつくる」という、50年にわたり築き上げてきた同社の価値を凝縮した一冊となっている。

書籍『drive! drive! drive!』。全1160ページで、厚さは7センチ、重さは1.3キロの大ボリューム。

カルチャー視点のブランドづくりに強み

原宿サン・アドは、サントリー宣伝部を母体とするサン・アドからHonda(本田技研工業)の担当部門が分離独立する形で設立された。1975年に原宿でスタートして以来、現在までHondaの仕事は途切れることなく続いている。

その50年の間の象徴的な仕事のひとつに、1981年発売の初代「ホンダ・シティ」の広告がある。英国のスカバンド「マッドネス」を起用し、CMソング『シティ・イン・シティ』にのせてムカデダンスを披露するCMは一世を風靡した。「この広告が象徴するように、私たちがHondaの広告やブランディングにおいて大切にしてきたのは、クルマというプロダクトの性能・機能訴求だけではなく、ユーザーの生活文化を踏まえた親密で共感性のあるコミュニケーションを積み重ねていくことでした。商品の先にいる“人”や“時代”を見続けてきた、いわばカルチャーの視点のブランドづくりこそが当社が提案するクリエイティブの独自性だと考えています」と話すのは、原宿サン・アド 代表取締役社長 大井邦生さんだ。

設立50周年にあたり、約2年前から進めてきたのが10月に発刊した自社編集の書籍『drive! drive! drive!』だ。アートディレクターの赤迫仁さんを中心に社内のプロデューサーやデザイナー、コピーライターなど若手も参画し、約20人で書籍の制作に取り組んだ。さらにチームの熱気は高まり、出版記念イベントの企画や、Tシャツ、ステッカーなど関連グッズまで制作・販売するプロジェクトへと拡大していった。

完成した書籍のボリュームは1160ページとなり、実に厚さは7センチ、重さは1.3キロ。50周年に50人がそれぞれ50台のクルマとカルチャーを語る構成だ。映画や音楽、文学、建築、グルメ、ファッション、写真、アートなど多様な分野を代表する人たちのほか、広告業界からはサン・アドの安藤隆さんや同OBの副田高行さん、さらに照明、サウンドデザイナー、プロデューサーらも多数登場している。過去に制作したHondaの名作広告も一挙掲載し、既存の自動車の専門書とも異なる一冊に仕上がった。

「この本はクルマがテーマですが、あくまで人が主役。50人に共通するのは、自身の専門性を掘り下げて極め、突出したこだわりを持っていること。各分野でカルチャーをつくり上げてきた人たちともいえます。人を通じて熱量や感情が生まれる行為がカルチャーであり、人や時代の価値観、ライフスタイル、空気感を捉えてきた50年間を集積したこの“カルチャーブック”は我々なりの作品集と考えています」(赤迫さん)。

書籍の中面から。Hondaの歴代の広告や、50人の著名人への愛車にまつわるインタビューなどから構成される。

次の50年へ、新しいドライブの始まり

書籍という形態にこだわったのは、企画、パッケージデザイン、プロダクトデザイン、アートディレクション、コピーライティングなど、原宿サン・アドが提供する一連のクリエイティブワークをひとつの形に残すことができると考えたためだ。さらには出版記念イベントを原宿のカフェで3日間開催。限定デザイングッズの販売やオリジナルフードとドリンクの提供、グランツーリスモ大会の開催など、クルマカルチャーを起点とした世界観を約400人の来場者に体験してもらった。「イベントを通じ、当社のクリエイティブとプロデュース力を感じていただくことも重要でした。来場された方からは“原宿サン・アドさんらしい、こだわりやユニークネスを再確認できた”といった反響をいただきました」(大井さん)。

3日間にわたり開催した出版記念イベントの会場では、入口に1981年に発売された初代「ホンダ・シティ」の実車を設置。Tシャツやキャップ、バッジ、アクリルキーホルダー、ステッカーなど書籍と連動した50周年のオリジナル記念グッズも制作・販売した。

Hondaの仕事で培われた長期的なブランド構築の実績は、近年のクライアントワークにも活かされている。“汚れ”をポジティブな価値に変換し生活者を応援するアクア「AQUA」のキャンペーン、ロングセラー商品の新価値を打ち出した森下仁丹「仁丹」のリブランディング、フェイクコンテンツが溢れる時代にリアルな爆破のビジュアルで話題になった日本情報産業(NII)の広告、社員の子育て体験から生まれた動画コンテンツ「チェッチェッコリ」(アストロミュージック)など、多様なアイデアと手法でカルチャーの活性化に取り組んでいる。

「ブランドと生活者の間にあるのが“カルチャー”。私たちクリエイティブの担い手が一人の生活者としてリアルな時代ごとの熱量、体温に共鳴し、ユーザー調査などマーケティング視点も交えた共感性の高い提案をしていきたいです」と、クリエイティブを統括する取締役の芝田孝一さんは語る。

さらに「AI時代に生活者に選ばれるブランドのあり方」について調査と分析を進めるなど、未来を考えた新しい試みにもトライしている。「今はAIが発達して最低限の最適解は容易に得られる時代ですが、Hondaをはじめブランドに長く携わってきた知見やスタンスを活かして、商品の周りにあるカルチャーとブランドを繋ぎ、未来へとドライブさせていく私たちなりの仕事のやり方をより一層追求していきたいです。その上で今回の書籍発刊は、原宿サン・アドの“次の50年に向けた新しいドライブの始まり”だと考えています」(大井さん)。

創立50周年を機にVIも刷新。このVIをもとに新オフィスもデザインした。

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