消費者を動かすことがますます難しくなるこの時代に、人が動く仕組みをどう設計するか。セガエックスディーの伊藤真人さんは、ゲームが人を夢中にさせる力を「9つの欲求」に整理し、その構造を企業や社会課題の解決に応用している。
「内発的動機付け」と「9つの欲求」
昨今、企業のコミュニケーション手法としても徐々に浸透しつつある「ゲーミフィケーション」。私はこれを「人を夢中にさせ、行動を起こさせるゲームの要素やデザインを、ゲーム以外の分野に応用すること」と捉えています。
人に行動を起こしてもらう方法には、法的拘束力などで強制する以外に「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2種類があります。前者は利便性の向上や報酬アップなど、外的要因で人を動かすこと。後者は当事者が自発的・能動的に動きたくなる仕掛けで背中を押すことです。時間を忘れてゲームに没頭した経験のある方は多いはず。ゲームはプロでない限り金銭を生みませんし、空腹も満たさず、寝不足を招くことすらある――合理的ではないのに人が惹きつけられるのはなぜでしょうか。
私はこの“内発的に動きたくなる力”を、3つの「時間軸」と3つの「環境軸」からなる「9つの欲求」として整理しました(01)。時間軸は「過去」「現在」「未来」で、どの時点に着目して欲求が喚起されるかを定めています。一方、環境軸は欲求の起点を分類したもので、「主体(対象者自身の感覚や感情)」「状況(対象者を取り巻く状況や環境)」「客体(対象物)」です。
セガエックスディーが独自に分類した「9つの欲求」。(左上から順に)進捗実感を求める「達成欲求」、自己有能感を求める「有能欲求」、自分自身の行動の決定を求める「自律欲求」、偶発性や好奇心を求める「求知欲求」、生理的欲求を元にした「感性欲求」、他者を意識することで刺激される「関係欲求」、希少性が高いと感じるものを求める「獲得欲求」、愛着や一貫性を求める「保存欲求」、損失の回避を求める「回避欲求」。
このうち中央の「感性欲求」だけは、人が美しい/心地よいと感じるなどの「生理的欲求」に基づいており、それ以外は社会的な関係性の...


