地域を周遊する 新たな体験デザイン

公開日:2026年2月02日

    インバウンドが過去最高を更新し、旅のスタイルが「滞在」から「体験」へとシフトするなかで、観光地ではない日本の“ローカル”が注目されています。今回集まってくれたのは、山梨県小菅村で古民家を活用した分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」を開業、鉄道沿線の駅舎や空き家を活用したJR東日本との共同事業「沿線まるごとホテルプロジェクト」など地域活性化プロジェクトを数々手がける、さとゆめ代表の嶋田俊平さん。三重県多気町に年間350万人を集める食をテーマにした未来型地域リゾート「VISON」をオープン、同じく三重県菰野町からスタートした複合温泉リゾート「アクアイグニス」を全国各地に展開する立花哲也さん。福井県の越前鯖江エリアで毎年開催されている国内最大規模のオープンファクトリーイベント「RENEW」のほか、物産ショップや宿の運営など観光まちづくりに取り組むTSUGI代表の新山直広さん。デザインやクリエイティブの力で地域の課題を解決し、人を呼び込む。ローカルと観光のこれからを語ります。

    有名観光地でなくても勝負できる時代

    嶋田:「ふるさとの夢をかたちに」をミッションに、2013年に創業した「さとゆめ」の代表を務めています。全国約50の地域にコンサルタントとして伴走しながら、人口700人の山梨県小菅村に2019年に開業した分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」や、JR東日本さんとの共同事業「沿線まるごとホテルプロジェクト」など、現在8施設の運営もしています。

    立花:元々は建設業で創業したのですが、20年ほど前に三重県菰野町にある小さな温泉宿を引き継いで、2012年に「アクアイグニス」という食のリゾートをつくりました。そのとき、食やデザインがあると地域に人が来てくれることに気付いて。2021年には、同じく三重県の多気町に日本の食・文化・アートを集めた「VISON」をオープンしました。特徴は、ナショナルチェーンを入れないということ。ここ数年はDXを通じた地域おこしにも取り組んでいて、理想の地方創生モデルを目指して、産学官で連携して企業を誘致しています。

    新山:福井県鯖江市で「TSUGI」というデザイン事務所を経営しています。「福井の仕事しかしない」と決めて、2015年から「RENEW」という工房見学イベントを開催したり、地元の事業者さんと商品開発やショップの運営をしたり。ほかにも「SOE」という観光まちづくり会社を立ち上げて、2025年11月には越前和紙を体感する「SUKU」という工芸宿をオープンしました。

    嶋田:小菅村の宿は1泊2食付きで4万5000円とそれなりの客単価なので、開業当初はシニア世代がメインの客層になると考えていました。それがふたを開けてみると、30~40代が50%で、20代が20%。お客さんの行動を見ていると、村の人たちに積極的に話しかけたり、何かするたびに写真を撮ってインスタに投稿したり、体験を二度三度と楽しんでいる。「モノ消費からコト消費」というとありふれた言葉ですが、本当にそうなんだなと実感して。

    立花:VISONも最も多いのは20代で、続いて30~40代、一番時間とお金があるともくろんでいた60~70代が最も少ない。コロナ中にオープンしたこともあって、テレビや新聞で取り上げられなかったのが理由かと思っていましたが、そもそもお金の使い方が変わってきているのかもしれません。

    新山:伝統工芸のイベントというと年配の方が多いイメージがありますが、RENEWもやっぱり20~30代が約半数。そのほとんどが日本人で、納得してものを買いたいという若い女性がメインになっています。

    立花:三重県ってインバウンドは全国37位(日本政府観光局/2024年外国人延べ宿泊者数)で、そもそも外国人旅行者はあまり来ないんです。でも、無理してインバウンドを呼ぶよりも、若い人たちに日本の良さを知ってもらえるというのは素晴らしいことですよね。

    新山:年1回のRENEWの一方、SOEでは通年型の産業観光やファクトリーツーリズムを実施していて、そちらは外国人が9割ぐらい。お金は持っているけれど爆買いではなくて、文化やものづくりの文脈に興味がある、いわゆる「モダンラグジュアリー層」が中心です。福井県はインバウンドが46位と三重県よりも順位が下なのですが、毎日必ず1組は訪れていますね。

    嶋田:ここでしかできない体験や偶然の出会い、さらに自分がその地域に何ができるのか。そういった「コト」に対してお金を出すし、楽しみ方もわかっている旅行者が増えている。たとえ有名な寺社仏閣や世界遺産、グルメがなくても、新しい目的地になれる手応えを感じています。

    新山:中には「和紙をつくるコウゾを植えられないか」といったように、産地にどう貢献できるかを考えている“ハードモード”の方もいます(笑)。

    嶋田:観光に行く前にはまずイ...

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