昨年夏の青山デザイン会議でも「令和のホラーブーム」について取り上げましたが、その勢いはまだまだ継続中。2026年に入ってからも、新感覚のホラー・サスペンス映画が続々と公開されています。今回集まってくれたのは、CMディレクターとして活躍するほか、脚本・監督を手がけた自身初となる長編作品『チルド』(7月17日公開)を発表、今年2月には同作品でベルリン国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞した岩崎裕介さん。「手法がテーマを担う」というコンセプトのもと佐藤雅彦さんとともに監督集団「5月」を立ち上げ、特殊な構造で“災い”を描く映画『災 劇場版』で監督・脚本・編集を務めた関友太郎さんと平瀬謙太朗さん。ネットで話題となった都市伝説を映画化した『きさらぎ駅』をはじめ数々のホラー作品を手がけ、Chilla's Art 制作の人気インディゲームを原作にした映画『夜勤事件』が公開中の永江二朗さん。なぜ今、ホラーやサスペンス映画が人気を集めるのか。話題の3つの作品から、2020年代の映像表現を掘り下げます。




ホラーは社会が不安定な時代に流行する
岩崎: 2017年に東北新社に入社して、2019年からCMディレクターとして活動してきました。昨年、初めての長編ホラー映画『チルド』をつくって、夏の公開に向けて映画祭行脚をしているところです。
関: 僕と平瀬は東京藝術大学大学院の研究室が同じで、もう14年ほど一緒に映画をつくっています。卒業後は、NHKでドラマの演出をしていましたが、2020年に平瀬や研究室の教授である佐藤雅彦さんと監督集団「5月」を立ち上げて、今年の2月には『災 劇場版』が公開されました。
平瀬: 僕は普段は広告やコンテンツ開発の仕事をしていますが、その傍ら脚本を書いたり、映画をつくったり。僕も関も「5月」としての活動もあるし、それぞれ個人としての活動もあります。
永江: 僕は小さい頃から映画が好きで、映画監督になりたくて。主に寺内康太郎監督のもとで助監督を務めて、28歳のときにVシネマで監督デビュー。鳴かず飛ばずでしたが、2022年の『きさらぎ駅』からだんだん風向きが変わって、苦節20年で公開中の『夜勤事件』がようやくヒットしました。
岩崎: 公開おめでとうございます。『チルド』を企画しているときに、同じくコンビニが舞台の『夜勤事件』がタイムラインに流れてきて、やばい!って。本当の意味で怖くて、まだ観られていないですもん(笑)。
永江: 『災』と『夜勤事件』は公開も同日(2月20日)だし、舞台挨拶もかぶっていて。
岩崎: まさに同期ですね(笑)。平瀬さんとは別件でご一緒しているし、皆やんわりと繋がっているんですね。
永江: ハリウッドでも大ヒットした『リング』や『呪怨』に代表されるJホラーブームが起きたのは、1990年代から2000年代の初め。僕はそのあと監督になったので、ホラーが衰退する一方の冬の時代だったんです。それが一周して今、新しいホラーが次々と生まれ始めている。世界ではもっと前からホラーブームが起こっているので、それにようやく追いついた、という感覚です。
平瀬: NEONとかA24のような、独立系映画スタジオの文脈ですよね。
岩崎: 歴史的にも、ホラーってパンデミックとか戦争とか不景気とか、社会が不安定なときに流行るんですよね。
永江: 自分の生活がうまくいっていないときに、幸せなラブストーリーとか観たくないのかもしれませんね(笑)。
岩崎: あとは、やっぱり考察ブーム。SNS上で議論をするのが楽しいっていうのもあるし、ホラーってイマーシブな体験だから、劇場に行くバリューが高いじゃないですか。
平瀬: 確かに、明るい昼間に家のテレビで観るより絶対に体感的ですもんね。
永江: お化け屋敷感覚で、友だち何人かで観に行きたくなるジャンルでもありますし。
平瀬: 『リング』や『呪怨』の系譜にいらっしゃる永江さんからすると、日本のホラーってどう見えているんですか?
永江: どちらも全米1位を獲って、世界を席巻している様子をまざまざと見てきたので、憧れは強烈にありました。世界に誇れるのは、やっぱりJホラーとジャパニメーションしかないと思っていましたね。
岩崎: 海外から見ると、日本の死生観みたいなものが新しかったんですかね。
永江: 襲いかかってこないのに、うしろに立っているだ...

