アイデアが自然と湧き上がるような「場」をつくるには、どんな視点や仕掛けが必要なのでしょうか。空間のデザインやコミュニケーションの在り方など、多様な領域の実践者に聞きました。
植村遥
Studio Onder de Linde 代表
うえむら・はるか/ Studio Onder de Linde を共同主宰し、布を用いた可動的・空間的デザインを手がける。Uemura Architecture Lab にて建築設計を行い、国内外で多様な空間づくりに携わる。
感覚に働きかける要素を重ねる
「アイデアフルな場」をつくるために大切なのは、光や音、素材の質感、空間の余白や動線など、人の感覚に働きかける要素を重ね合わせることです。人々は受け身ではなく、自分の感覚に従いながら空間の中で動き、考え、互いに関わることで、日常の動作や小さな発見から偶発的な会話や新しい発想が生まれます。
空間は固定的に完成させるのではなく、活動や関係性に応じて柔軟に変化し、人々の主体的な関わりを支える媒体として機能することが求められます。こうした光や素材、形態の重なりや空間の応答性を通して、人々が自然に関わり、思考を交わす環境を設計することが、今求められているアイデアフルな場のあり方です。個人の創造性を伸ばすと同時に、組織全体の新しいアイデアの循環や協働を促す基盤ともなります。
鹿野喜司
YOHAK_DESIGN STUDIO
チーフディレクター
かの・ひさし/これまで用途やスケールに捉われず空間領域のデザインに携わり、コクヨ・UDSを経て2017 年THINK OF THINGS 立ち上げと同時にコクヨのインハウスデザインコレクティブ YOHAK_DESIGN STUDIO を始動。体験の拡張を模索し、実験的なアプローチで場の再構築に取り組んでいる。主な実績としてSerendie Street Yokohama / ANB TOKYO /THINK OF THINGS/ RAKSUL office / HOTEL KANRA KYOTO など。
コンテクストの再定義
創造的な活動を促すためにはちょっとしたきっかけが必要だと思っています。そのきっかけづくりとして大事にしている視点が、モノからコトまで横断するコンテクストのデザインです。場という観点で考えると用途を再定義するということでしょうか。
たとえば、用途が限定された場所に別の用途を重ねてみると、その場に関わる人も多様になり動き方や関わり方が異なってきます。決まった用途を別の使い方をしてみると、いつもと違う光景や...

