グラフィックデザインの実験的視点

公開日:2026年8月05日

  • 岡崎智弘氏(SWIMMING)、小玉文氏(BULLET Inc.)、三木聖也氏(TOPPAN)

クリエイターとTOPPANのコラボレーションにより、グラフィックデザインと印刷表現の可能性を探る試みとして、2006年にスタートした「GRAPHIC TRIAL」。20年を迎えたことを記念する展覧会「80 GRAPHIC TRIALS」が、9月27日まで開催されています。今回集まってくれたのは、同展に参加し、グラフィックの枠を超えて活動する3人。NHKEテレ『デザインあ』の人気コーナー「解散!」の映像や、展覧会のディレクションなどを手がけ、個人活動としてもマッチ棒をモチーフにしたコマ撮りアニメーション「Matches」を毎日制作・発信する岡崎智弘さん。さまざまな素材や印刷加工技術を駆使し、白い瓶を魚の形に見立てた日本酒「錦鯉」をはじめ、個性的なパッケージを生み出し続ける小玉文さん。プリンティングディレクター・運営としてGRAPHIC TRIALに関わり、岡崎さん、小玉さんの作品制作にも伴走した、TOPPANの三木聖也さん。AIやテクノロジーの進化によりデザインのあり方も変わるなか、その実験的な視点に迫ります。

グラフィックデザインと印刷の20年

岡崎 視覚的な情報や体験のデザインをベースに、印刷物のほか映像や展覧会の仕事をしています。最近は特にコマ撮りのアニメーションとグラフィックデザインの重なる部分に興味があって、日々探求しています。

小玉 デザイン事務所BULLET Inc.の代表を務めながら、母校の東京造形大学で教鞭をとっています。パッケージデザインを主としたブランディングの仕事に多く関わっていることから、紙や印刷加工に興味を持ち、アナログ加工の"最後の砦"として頑張っていきたいという気持ちでいます。

三木 2019年に凸版印刷に入社して、1年目からプリンティングディレクターの部署に配属されました。2022年の「GRAPHIC TRIAL」ではプリンティングディレクターとして小玉さんの、2024年には運営として岡崎さんの作品を担当させていただいて。今は、印刷より手前の制作クリエイティブなどのディレクションなどをしています。

小玉 先日も、急きょ会場に駆けつけて作品を解説してくださったのですが、めちゃくちゃ生き生きしていましたね(笑)

三木 今は印刷に飢えていますから(笑)。GRAPHIC TRIALは、グラフィックデザインと印刷表現の新しい可能性を探る試みとして、2006年にスタートしました。今年は20周年を記念して、9月27日まで印刷博物館P&Pギャラリーで「80GRAPHIC TRIALS」を開催しています。

小玉 ちなみに20年前というと、岡崎さんはおいくつですか?

岡崎 25歳で、デザイン事務所に勤めていましたね。その数年後に、キヤノンのEOS 5D Mark IIというデジカメを買って、使っているうちにコマ撮りとグラフィックを混ぜたらどうなるのかなと思い付いたんです。しばらくすると、世の中的にもオンスクリーンのグラフィックの仕事が増えてきて。

小玉 まさに先駆者ですね。

岡崎 いやいや、面白いと思ってやっていたら迷い込んだだけ。しかも当時は、そういうことをしている人があまりいなかったので、栄養も豊富だし掘っている人もいない"謎の森"を発見した、みたいな感じで。

小玉 岡崎さんと私は、大学時代に秋田寛先生のゼミに所属していたんです。10年以上前に歴代ゼミ生の集まりでお会いしたとき、「最近は哲学の本ばかり読んでいる」と言っていて、変わった先輩だなと(笑)。近年ではグラフィックデザインも平面以外の表現を求められるようになって、岡崎さんも、もはやグラフィックデザイナーという肩書きではないような気がするのですが。

岡崎 動いていても、視覚的な刺激をつくっているという意識があるので、そういう意味でのグラフィックデザインと捉えています。そもそもグラフィックって、平面的な技術が軸にあって、空間の次元なら立体的なサインや本、時間の次元なら映像やWebサイトというように、いろんな次元や領域にまたがっている。しかも世の中の動きに合わせて変化していきますよね。

三木 GRAPHIC TRIAL も、「オフセット印刷機で遊ぶ」ことをテーマに始まりましたが、最近ではスクリーン印刷や箔押しなどの加工が使われるようになって、どんどん3次元的なアプローチが増えています。回数を重ねるうちに、オフセット印刷だけでできる実験的なことはだいたいやり尽くされてしまって、祖父江慎さんなんて、インキにカレー粉を混ぜていたくらい(笑)

岡崎 すごいインパクトでしたよね。

三木 唯一のルールは「ひとりにつき5点のポスターシリーズを制作する」ということ。毎年テーマを決めていて、岡崎さんのときは「あそび」、小玉さんのときは「CHANGE」。必ずひとりはTOPPAN社内のクリエイターが入るように選定しています。

クリエイターに必要なのは「見る力」...

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