出版不況が叫ばれて久しい。しかしその裏側で、書店や本に関わる人々は、形を変えながら進化を続けてきた。大型書店からライフスタイル書店、独立系書店、さらにはブックフェアへ――。「本のある場」はこの20年でどのように変わり、これからどこへ向かうのか。書店や編集、ブックカルチャーの現場を見続けてきたORDINARY BOOKSの三條陽平さんが、その変遷と今後の可能性を紐解く。
出版不況といわれて
仕事として本に携わるようになって18年ほどになる。書店にアルバイトとして入社してそのまま就職し、編集プロダクションに転職後、独立して今に至る。長くも短くもないキャリアだと思うが、その間、国内外の数えきれない本を手に取り、また目の前を通り過ぎていった。時代も流行りも街も大きく変わったこの18年間で、変わらないものがひとつだけある。それは出版不況だ。出版不況とずっといわれている。出版売上のピークは1996年(書籍が1兆931億円、雑誌1兆5633億円、合計2兆6564億円もの市場規模を誇った)だが、2025年には9647億円(書籍が5939億円、雑誌が3708億円、ただしこの他に電子出版の売上が5815億円に上る)と、ピーク時の半分以下まで落ち込んでいる(出版科学研究所『季刊出版指標2026年冬号』より)。書店の現場で働いていた体感として「本が売れている」と感じることは何度もあったが、事実としてこの30年間、本の売上は落ち続けている。本が売れないということは書店と本屋がなくなることとイコールで、全国1741市区町村のうち、書店が1店舗もない自治体が2025年8月時点で498市町村あり、全体の28.6%に上ることが明らかになっている(出版文化産業振興財団調べ)。
出版不況の話題やデータは挙げだしたら事欠かない暗澹たる現況だが、本稿では、出版不況の渦中の本と書店、本屋をめぐるさまざまな試行錯誤の痕跡を辿ってみたいと思う(紙幅の都合上、かなり省略せざるを得ないことをご承知いただきたい)。
「本を売る場」の変遷
出版不況で書店と本屋も変換を迫られた。私がアルバイトとして入社した「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」(現「六本木蔦屋書店」、以下TTR)から始め、2000年代にさかのぼり約20年間を概観する。TTRはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)のフラッグシップショップとして、2003年に六本木ヒルズ開業と同時に同施設に誕生した。「TSUTAYA」といえば当時はレンタルビデオ店が大半で、代官山に代表されるような「蔦屋書店」はまだ存在しておらず、六本木ヒルズを手がける森ビルからは、出店を渋られたというエピソードを聞いたことがある。TTRは2003年当時としては非常に画期的な書店だった。スターバックスを併設した日本初の書店だったことに...


