レガシーは参加者の身体のなかに残る。それは決して消えることはない。

公開日:2026年1月06日

  • 古川裕也(クリエイティブ・ディレクター)

生成し続けるものだけが可能性をもつ

新しさとは歴史に対する裏切りである。デザインシステムの発明、OPEN という態度、市民の巻き込み方など。引地耕太は今年の万博でパブリックイベントの歴史を鮮やかに裏切ってみせた。

それが説得力を持ったのは「いのち」というテーマが初期から最後まで一貫していたからだと思われる。プロジェクト・テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」は、コピーとしてはややお役所的だけれど、埋め込まれていた「いのちとは何か」という問いが全体を通底する思想的バックボーンになっていた。スローガンを受けてシマダタモツによるセル(細胞)をモチーフにしたロゴマーク、それを完璧に引き受けて生命の本質のひとつである「増殖」というモチーフを引地が「こみゃく」というデザインシステム、つまり常に動き変化し続ける運動体に結実させた。

ブランクーシが言っている。「アートにおいても人生においても、いちばん重要なのは生命力である」。完成形ではなく生成のポテンシャルを持っている状態。そのダイナミズムのことを生命力と言っているのだ。完成より生成過程、未完成であ...

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大阪・関西万博デザインシステム大解剖<拡大版>

「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げ、2025年に開催された大阪・関西万博。閉幕後の今もなお、その象徴的なキャラクター「ミャクミャク」を筆頭に、多くの人々に強い記憶を残しています。その熱狂を高めてきたのが、“開かれたデザイン”をコンセプトとした「EXPO 2025 Design System」の存在。そこから生まれた「こみゃく」の二次創作なども盛んに行われ、多様な人々の参加と共創を促す“生成的オープンデザインシステム”として世の中に広がっていきました。今号では、2025年8月号の本誌特集「デザインシステム大解剖」をさらに拡大。システムの中核を担った引地耕太さんと改めてその全貌を紐解きつつ、本万博にまつわるデザインやキャラクターなどの“ソフトレガシー”が、これからの世の中でどう活かされていくのか、多様な領域の専門家らとともにその可能性を掘り下げます。

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