福里真一さんを中心に、第一線で活躍するCMプランナーが年に一度集まる「明るいCMプランナーの会」。7回目を迎えた今回は、博報堂の杉山芽衣さんがゲストです。「虎ノ門広告祭」や「CMプランニングは教えられるものか?」、そして毎年恒例「2025年のベストCMは?」といったお題を通じて、今の広告とCMを掘り下げていきます。
ゲストは「ボディメンテ」CMのプランナー杉山芽衣さん
福里:「明るいCMプランナーの会」は、7回目を迎えました。今回もCM制作において決定的な役割を担うCMプランナーという立場から、広告やCM、そして世の中全体も含め、明るく語り合っていきましょう。
前回は「カロリーメイト」(大塚製薬)の受験生応援CMがACC賞のフィルム部門(Aカテゴリー)にて4連覇中で、「我々がより良いものをつくり、5連覇はなんとしても阻止しよう」と誓い合いました。結果、「カロリーメイト」はグランプリでなかったものの、大塚製薬の「ボディメンテ」がグランプリになり、福部明浩さん&榎本卓朗さんチームという意味では、5連覇が達成されてしまいましたね。
今回はその「ボディメンテ」のCM「THEDAY #C105」のプランナーでもある、杉山芽衣さんにゲストとして来ていただきました。これはコミックマーケットを扱ったCMで、制作にあたって実際にコミケに潜入をしたと聞きました。
杉山:そうなんです。自分で駐車場の整備などをしてきました。中学生の頃からコミケに足を運んでいて、有志のボランティアで運営されているイベントと知っていたので、リスペクトが足りないと企画として自滅すると思っていました。
福里:福部さんと榎本さんのチームに今回加わってみて、その凄さはどこにあると感じました?
杉山:ヒアリング力ですね。今回も仮説を立てたうえで、コミケに参加している人へのインタビューに膨大な時間をかけました。普段の連絡内容や服装など、「どういう人たちなのか」を徹底して掘り下げて。そこもCMに反映されています。
福里:とことんリアルを追求する企画手法ということですね。
一方で、明るいCMプランナーの会からも、栗田さんが花王「メリット」でTCCグランプリやACCゴールドなど多数の賞を受賞。大石さんも「CM好感度CMヒットメーカーランキング」(CM総合研究所調べ)で、2年連続でプランナー部門1位を獲るなど、快挙もありました。ということで、本題に入っていきましょう。
「虎ノ門広告祭」とは何だったのか
福里:ひとつめのテーマは、2025年10月に開催された「虎ノ門広告祭」です。当初は「広告」と冠したお祭りに今時お客さんが来るのか?と心配されていましたが、実際は大盛況で、若い世代もたくさん来場したそうです。これについて、皆さんそれぞれの思いを聞いていけたらと思います。
神田:「広告業界を広告する」という試みだったと捉えると、広告業界の未来に繋がる重要なイベントだったと思います。広告クリエイターは、マーケティングやPR、ビジネスなど多様な視点を有しており、企画もエンターテインメント性や芸術性があったりと、さまざまな考えを混在させてモノをつくるという、結構稀な職能を持つ存在だと思っています。ただ最近は、広告においてもデータやAIの活用が進み、貴重な職能が希薄化していきかねない時代だと感じています。広告業界の人たちが、自ら職業を守らなければいけない時代になると考えると、その第一歩として、広告業界を広告しようという試みは有意義だったと思います。
福里:なるほど、「広告クリエイターを広告していかないと自分たちの仕事がなくなるのではないか」という危機感から生まれた祭りとも言えるのかもしれませんね。
山本:僕は一度しか行けなかったのですが、イベント自体がとてもかっこよく見えました。僕が広告のクリエイターを目指していた頃は、たとえば電通のクリエイティブ試験は数百人が受けていましたが、今はかなり希望者が減っていると聞きます。そのなかでも、若い人が集まって熱が生まれているということで、業界の未来は明るいと思いました。
杉山:明円(卓)さんや真子(千絵美)さんたちによる展示「あ、この言葉、気にになる展」に来たカップルが、そのまま古川裕也さんの講演を聞いて、「クリエイティブディレクターってたくさんいるんだね」と話していた――という話を噂で聞きました。多様なクリエイターを知ってもらう機会となるイベントだったと思います。
また個人的に、「CM一気見シアター 福里真一篇」を他業種の友人と見ました。30代半ばの私たちが、思春期に見ていたCMが流れて、友人も「面白い、楽しい」と話していて。最近はカルチャーを浴びることができる場所が減っているためか、SNSでもカルチャーイベントとして紹介されていて、今っぽいなと思いましたね。
福里:若者が「広告ってカルチャーだったんだ」と初めて知る場だったのかもしれない、と。
杉山:今の若者が日常的に見るのは動画配信サイトのプッシュ型広告が多く、テレビCMをシリーズで見ることってなかなかないんです。でも「一気見」という形であれば、映画や映像作品を見る感覚で楽しんでもらえる。今の子は映像を見る耐性が無いので、一気見のほうがSNSを使うときと同様に手軽な感覚で楽しいんだろうなと感じました。
福里:私のCMの「一気見シアター」は人が来るのかめちゃくちゃ不安だったんですが……結果的にたくさんの人が訪れてくれまして……。年配のクリエイターが昔の広告の話をするのはダサいという意見もあるでしょうが、それが新しい何かに繋がることがあるわけだから、昔話はむしろどんどんした方がいいんじゃないかと思いましたね。
大石:TCCなどはすでに大人が築き上げたものに若者が入ってくるイメージですが、虎ノ門広告祭は、大御所の大人たちが若者に呼ばれている感じがして、その逆転が面白かったです。それに登壇している若手の皆さんは、皆すごくSNSでの発信力がありますよね。僕も始めようかなと思いました(笑)。
福里:つべこべ言わずに始めればいいじゃない(笑)。神田さんの「広告を広告していかなきゃいけない」という話に戻りますが、そもそもこれまでの広告クリエイターが発信力が弱すぎた、というのはありますよね。広告のつくり手は黒子であり、それでいいと思っている人がつくってきましたが、これからは広告のつくり手も作家なんだという気持ちで取り組むべきなのかもしれません。
吉兼:僕は「クリエイティブ祭」じゃなくて「広告祭」という名前にしたのが良いなと思いました。広告に携わる人たちの自己肯定感が上がった気が...

