「今の字幕では、感情や豊かな物語性が伝わりきらない」そんな現状に疑問を抱いたデザイナーの声から、FCBは映画の字幕を進化させる挑戦を始めた。「アクセシビリティは贅沢品ではなく、基本的な権利」。アカデミー賞での功労賞受賞を経て映画の未来を変え始めた、革新的なプロジェクトの舞台裏を企画をリードしたFCB Chicago のBruno Mazzottiさんに聞いた。





概要/FCB Chicagoが、シカゴ聴覚協会と聴覚障害者コミュニティ、Rakish Entertainmentとのコラボレーションで実施した「Caption with Intention」は、映画の「字幕」を再設計したプロジェクト。映画制作の現場ではさまざまな変革が起こってきたが、字幕だけは情報伝達に特化した当初の形式のまま取り残されていた。そこで登場人物の感情や緊張感を可視化するために、字幕に動きや強弱をつけ、色分けすることで話者を識別する新たなスタイルを確立。聴覚障害者にも情緒が伝わる体験を実現し、196言語対応のオープンソースとして世界中のスタジオで採用が進んでいる。アカデミー賞の科学技術部門で功労賞を受賞した。
●Cannes Lions:Brand Experience & Activation 部門・Design 部門・Digital Craft部門グランプリ、Titanium Lion
「アクセシビリティは後回しにされがち」
――着想のきっかけを教えてください。
このアイデアを最初に提案したのは、難聴のあるデザイナー So A Ryuさん(当時FCB Chicago)でした。彼女は、映画やテレビ番組の従来の字幕は、感情や豊かな物語性を十分に伝えられていないと感じていたそうです。それを聞いたとき、私も強く共感をして。私自身はCODA(聴覚障害がある...