変化のスピードが増す現代、企業が生活者に必要とされ続けるために企業の資産と社会、そしてクリエイターが「共創」する取り組みの重要性が増しています。資生堂ではここ数年、社内の研究資産を社会の価値に転換する取り組みを進行中。なぜこうした取り組みを進めるのか、そしてそこで求められるクリエイターの価値とは?

企業資産と社会を繋ぐ価値のつくり方
資生堂は1872年に東京・銀座で創業し、1916年に研究部門を開設した。同社でブランド価値開発研究所グループマネージャーを務めるのは中西裕子さんだ。「元は研究職として入社し、処方開発や基礎研究に従事した後、R&D戦略部門に異動しました。デザイン思考を用いた、お客さま発想で研究テーマを考える取り組みやオープンイノベーションを手がけてきました」と説明する。
2019年、「お客さまにより近いところで研究すべきではないか」という考えのもと、横浜駅近くに研究拠点である「グローバルイノベーションセンター」を開設。大きな吹き抜けと、誰でも自由に出入りできる開かれた環境が特徴的な施設となった。「当初のコンセプトは『美のひらめきに出会う場所』でしたが、コロナ禍を経て、外見的な美しさだけでなく、内面や健康を含めて美しさとして捉えられる傾向が増加しました」と中西さんは振り返る。
その後2025年に同施設は「Shiseido Beauty Park」としてリニューアルを遂げた。「コンセプトを新た...