企業の「ビジョン」を機能させるクリエイターと経営者の関係

公開日:2026年5月01日

  • 中川淳(VISION to STRUCTURE)、引地耕太(VISIONS)

「ビジョン」という言葉が経営の共通言語となりつつある今、改めて問われているのはその実効性だ。中川政七商店の元会長であり、その経験を活かして「VISION to STRUCTURE」を立ち上げさまざまな企業の経営支援を行う中川淳さん。大阪・関西万博のデザインシステムを手がけ「VISIONs」で企業や社会づくりの支援をする引地耕太さん。「ビジョン」を社名に掲げる両名は、経営者とクリエイターという領域を横断し、ビジョン起点で経営やプロジェクトを推進してきた。そんな2人の対談から、ビジョンを“飾り”で終わらせないための構造づくりと、クリエイティブが果たすべき真の役割を探る。

中川 淳 なかがわ・じゅん(右)
VISION to STRUCTURE 代表取締役社長。1974年生まれ。京都大学法学部卒業後、2000年に富士通へ入社。2002年に中川政七商店に入社し、2008年に十三代社長、2018年に会長に就任。「日本の工芸を元気にする!」を掲げ、工芸業界初のSPA業態を確立するとともに、経営コンサルティング・教育事業を展開。2025年に会長を退任。現在は、志ある企業の共同体PARaDEや、ビジョンを起点とした経営コンサルティングを行うVISION to STRUCTUREの代表として、世の中に「いい会社」を増やす活動に取り組んでいる。2026年度よりグッドデザイン賞審査委員長。

引地耕太 ひきち・こうた(左)
クリエイティブディレクター/一般社団法人COMMONs代表理事/VISIONs代表。1982年鹿児島県生まれ。東京/福岡を拠点に活動するクリエイティブディレクター。タナカノリユキアクティビティ、デジタルエージェンシーワントゥーテンにてECDを務め、2025年VISIONs(ヴィジョンズ)を設立。「こみゃく」という愛称で人気となった大阪・関西万博のデザインシステムをはじめ、万博夢洲会場におけるデザイン・アート・サウンドによるオープンデザインプロジェクト「EXPOWORLDs」を手がける。2025年『紅白歌合戦』ロゴ・キービジュアル、ヤンマー「ヤン坊マー坊」のキャラクターデザインリニューアルなど、数々の注目プロジェクトを国内外で展開。

「ビジョン」の本質とは

——改めて、お2人の考える「ビジョン」の定義とは。

中川:「ビジョン」「ミッション」「パーパス」など最近はさまざまな言葉で呼ばれていますが、僕はシンプルに「その企業が存在する理由」だと捉えています。「それを実現するために企業が存在する」という意味で、経営の最上位にくるものだと定義しています。

引地:全く同意見です。よくいわれる「北極星」ですよね。社長も組織全体もそこを目指して進んでいくというものであり、「なぜこの事業をやっているのか」という意義を、組織内だけでなく、外部のステークホルダーとの関係性までを含め設計したものが、僕の考えるビジョンです。

中川:この5年ほどビジネス書でもよく取り上げられている言葉ですし、さらに遡れば1990年代半ばからブームとなった「ビジョナリー・カンパニー」のような概念もありますが、僕自身の経験と体感からすると、残念なことに世の中のビジョンの9割は機能していません。

今どき自社のお金儲けだけを考える経営者は少なく、ビジョンを持った志ある経営者は多いのに、それが実際の経営と繋がっていないのです。ビジョンが伝わらなければ、社員はやりがいを感じられません。その接続をもっとうまく整えてあげれば、世の中にもっといい会社が増えるはず。そんな思いから、中川政七...

この先の内容は...

ブレーン』 定期購読者限定です

ログインすると、定期購読しているメディアの

すべての記事が読み放題となります。

購読

1誌

あたり 約

3,000

記事が読み放題!

この記事をシェア

この記事が含まれる特集

「パーパス」のその先へ 企業のビジョンを実装するデザイン

近年、多くの企業で「何のために存在するのか」という存在意義を言語化したパーパスやビジョン・ミッション・バリュー(MVV)を定める企業が増えました。一方で、その内容を日々の事業や組織文化、ステークホルダーからの評価や認知などに繋げていくかが次なる課題となっているケースも多く見られ、実装させるにはデザインの力が欠かせません。本特集では、抽象的なビジョンを具体的なプロダクト、サービス、そして経営判断の指針へと変換する「デザイン」の役割を深掘りします。実装に向けた具体的なプロセスと、変革をもたらすデザイン、クリエイティブの可能性を探ります。

MEET US ON