新習慣の提案 高圧洗浄機を使った清掃を「日常」へ ―ケルヒャー ジャパン「OC Handy Compact 」

公開日:2026年1月30日

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    ケルヒャージャパンが2025年9月に発売した、同社史上最小のモバイル高圧洗浄機「OC Handy Compact(通称:ハンディエア)」の売れ行きが好調だ。2025年度のグッドデザイン賞を受賞し、ベスト100にも選ばれている。マーケティングの観点からヒットの要因を探る。

    (右から)ケルヒャー ジャパン マーケティング&プロダクト本部 家庭用プロダクト部 部長 東郷みぎわさん、同部 プロダクトマネジメント 本田圭悟さん。

    販売台数は計画の7倍で推移の大ヒット

    1935年の創業以来、高圧洗浄機のパイオニアとして世界をリードしてきたドイツの清掃機器専業メーカー、ケルヒャー。同社はこれまでグッドデザイン賞を多数受賞。2025年度は手のひらサイズのモバイル高圧洗浄機「OC Handy Compact(通称:ハンディエア)」がベスト100に選出された。販売台数も2025年9月の発売直後から好調で、計画の7倍で推移し話題を呼んでいる。

    「OC Handy Compact(通称:ハンディエア)」。

    「日本の都市部、特にマンション居住層にとって、従来品は収納場所や準備の手間が大きな障壁となっていました。高圧洗浄の『きれいにする喜び』を全ての人に届けるには、人々が抱える物理的・心理的な課題を根本から解決する必要があったのです」。そう語るのは、マーケティング&プロダクト本部部長の東郷みぎわさんだ。

    「ハンディエア」は電源も水源も不要。リュックサックのポケットにも入るサイズでどこにでも持ち運べるコンパクトさが強みだ。清掃への意識を「面倒で大変」から「手軽で、楽しく、気持ちが良い」へと変えることを目指し開発された。「スペースが限られる日本の住環境における収納の課題も根本的に解決できました」(東郷さん)。デザイン面ではブランド独自の黒と黄色のカラーリングをはじめ、高級な質感や手になじむフォルム、折りたたみが可能となるガン型の外観や片手で持てる軽さにもこだわりがある。

    業務用製品で培ってきた厳格な品質基準を適用することで、製品クオリティも担保している。単に小型化するだけでなく、日常の汚れにも対応できる水圧との最適なバランスを追求した。効率の良い部品配置やバッテリー駆動での安定した水圧を維持するための新しいポンプセットの開発、折りたたみ式を実現するための複雑な内部配線構造などの課題をひとつずつ解決していった。

    初となるクラウドファンディングの活用

    従来の高圧洗浄機のユーザーは50~60代が中心だったが、同製品ではアウトドアやスポーツが趣味の若年層や都市部のマンション住まいのファミリー、利便性を重視するミニマルなライフスタイルを好む人たちに購買層を広げることを目指した。

    とはいえ新しい使い方を提案する製品ほど、市場の受容性は既存の流通網だけでは測りづらいという側面もある。そこで同社が選んだのが、クラウドファンディングという手段だった。

    9月の全国販売開始に先がけ、6月に応援購入サービスの「Makuake」で販売した。クラウドファンディングの活用自体が同社としては初のことだった。「『Makuake』には、新しい価値に敏感な人たちが集まっています。彼らがこの製品をどう受け止めるのか直接確かめようと思いました」(東郷さん)。

    クラウドファンディングでは早くも初日に約20分で2500台が完売。市場の潜在的な大きさを確信でき、感度の高いユーザーとの接点を開拓することができた。

    確かな手応えを得たのち、9月の一般発売とともにコミュニケーションも一気に加速させていった。「帰るまえに、10秒ケルヒャー。」というコピーを掲げ、「自宅に持ち帰ってから洗う」のではなく、「出先で、その場で洗う」という新しい体験価値を前面に押し出した。

    その世界観を象徴するのが、「ドロンコバスターズ」と銘打った広告展開だ。海外B級映画風の演出で、黄色の制服に身を包んだ“保安官”がキャンプ場に突如出現。「ドロンコを持ち帰ることだけは許さない」というユーモラスな正義感のもと、ハンディエアで泥を一瞬にして洗い流すというクリエイティブを用いている。

    「この表現で転換されたのは、清掃の意味づけそのものです。“面倒な後始末”だった行為を、“その場で完結する、ちょっと楽しい体験”へ。プロダクトとクリエイティブの両輪で、新しい清掃習慣の創出を試みました」(東郷さん)。

    製品広告「ドロンコバスターズ、現る!」。

    「ハンディエア」の使用シーンの例。泥がついたユニフォームやスニーカーなどを一気に洗浄できるほか、約800グラムと軽量でリュックサックなどに入れて持ち運べる。ベビーカーのタイヤの洗浄などにも適しており、誰でも使いやすい。

    モバイル洗浄ソリューションの定着へ

    発売後は「こういうアイテムを待っていた」と支持する声が多く寄せられた。「一時は品薄状態が続きました。想定していたアウトドアやアクティビティ後の使い方に加え、家まわりの手軽な洗浄にも利用できるといった期待の声も大きかったです」(同部 本田圭悟さん)。

    今回のグッドデザイン賞ではプロダクトのデザイン性を超えた、「高圧洗浄機を出先に持っていく」という新しい清掃習慣の創出という企業姿勢が高く評価されたと考えている。そんなケルヒャーが現在目指しているのは、これまで特別だった高圧洗浄を「日常的で身近なもの」に変えるモバイル洗浄ソリューションの定着だ。「今後も高圧洗浄機市場の裾野を広げ、お客さまの清掃に対する意識を変えていきたいと考えています」(本田さん)。

    審査員講評:

    高圧洗浄機はどこの家にでもあるものではないだろう。業務用からコンシューマー用に転用された製品だけに、場合によっては過度とも言えるスペックや大きさから、導入できるユーザーは限られている。スムーズな折りたたみ機構とコードレス化によって、非常にコンパクトになり、これまでとは全く違う用途が見えてきた。高圧洗浄機の在り方を大きく変えるポテンシャルを秘めている。

    中坊壮介(なかぼう・そうすけ)
    プロダクトデザイナー/
    生活家電 審査ユニットリーダー

    審査員講評:

    汚れを落とす楽しさ・高圧水流による爽快な清掃体験を、より多くのシーンで提供しようとするパイオニア企業の積極性が高く評価された。「高圧洗浄機を出先に持っていく」という新習慣をコンセプトに、性能・手軽さ・コンパクトさを高次元で達成し、新たなデザインアイデンティティとして完成していることがすばらしい。既存品の概念を再考し、性能向上とデザインの進化を止めない企業姿勢に今後も注目したい。

    山﨑宣由(やまざき・のぶよし)
    プロダクトデザイナー/
    UXデザイン研究者

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