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ミラノデザインウィークから考える、ブランドの育て方

公開日:2025年5月30日

毎年4月にイタリア・ミラノで開催される世界最大規模のデザインイベント「ミラノデザインウィーク」。ここ2年ほど青山デザイン会議でも同イベントを取り上げてきましたが、今回はひとつのブランドにフォーカス。2005年の初出展以来、フィリップ・ニグロ氏、ネリ・オックスマン氏、藤本壮介氏、ライゾマティクスなどのクリエイターとのコラボレーションを通じて、ブランドの世界観を伝えるさまざまな体験を生み出し続けてきたレクサスに注目しました。ミラノ出展20周年を迎えた今年は、新世代コクピット操作デバイス「ブラックバタフライ」をモチーフに、総勢5組のクリエイターが作品を制作。今回のプロジェクトを担当したレクサスデザイン部部長の須賀厚一さん、インスタレーション「A-Un」のほかコンセプトや展示空間のデザインにも関わるクリエイティブディレクターの野添剛士さん、アートディレクターの池澤樹さんに、レクサスというブランドの今、そしてクリエイターから見たミラノデザインウィークの意味や役割を語っていただきました。

ミラノで感じた、デザインの“幅”

須賀:2010年からレクサスデザイン部に所属して、現在は部長を務めています。野添さん、池澤さんとは2023年のジャパンモビリティショーからご一緒していて、ブランドの方向性やコミュニケーションについて議論を重ね、今回のミラノデザインウィークにも、ともに挑んでいただきました。

野添:僕はクリエイティブディレクター、池澤くんはアートディレクターとしてコンビを組んで、今回出展した作品名のとおり“阿吽”の呼吸でやっています。

池澤:須賀さんもカーデザイナーですし、クリエイター3人が揃って取り組めるというのは、なかなか稀有なプロジェクト。話をしていても、クリエイティビティについての視野が広くて、ハッとさせられることがたくさんあるんです。

野添:車の開発段階でもコンセプトから関わらせてもらっているので、広告だけの仕事よりももう一歩深く入れる。ジャンルは違いますが、すごく言語が通じるというか、クリエイター同士がコラボレーションする醍醐味を感じています。そもそも僕らが憧れる車をたくさんつくっている人だから、リスペクトしかなくて。

須賀:ありがとうございます。レクサスがミラノデザインウィークに初めて出展したのは2005年。当時は、まだ自動車メーカーが出展するのは異例のことで、空間の中にただ車のインスタレーションを置くところからスタートしたと聞いています。それから20年にわたって、日本発のラグジュアリーブランドを世界に発信したいという思いで出展を続けてきました。

野添:これまでレクサスは毎回、さまざまなクリエイターと一緒に作品をつくってミラノに出展していて、ある種コラボレーションすることがチャレンジになっていたと思うんです。でも今回は、先に「ブラックバタフライ」というテーマを設定していたのが、例年とは少し違うところで。

須賀:デザインウィークの中心であるミラノサローネは国際的な家具の見本市ですから、その場を荒らしてはいけないという意識もあったのだと思います。ですから、これまであまり車を前面に出すことはしていませんでした。でも今は、自動運転やEVなど、自動車産業そのものが100年に一度といわれる変革期を迎えています。レクサスが今後どういう方向に進化していくのか、プロダクトを通じて未来を提示することが必要だと考えたんです。

野添:昨年に続いてミラノに行かせてもらいましたが、今年はとにかく取材を受ける機会が多かったですね。レクサスへの注目度の高さに加えて、やっぱり世界中のデザイン関係者が一丁目一番地として見ている場所なんだと実感しました。

須賀:私もミラノのプロジェクトに関わり始めたのは2018年からで、過去を連続的に見ているわけではないのですが、今年は日本をはじめ、アジアや東洋の美を再解釈して表現するような展示や作品が多い印象を受けました。

野添:僕が普段参加している、カンヌライオンズのようなクリエイティブアワードって、ソーシャルグッドの流れがすごく強いんです。それに比べるとミラノは気持ちがいいほど五感的。アイデアとか社会に対するコンテキストが受ける時代にあって、逆側に振っている感じがすごく面白いなと。

須賀:それから、ルイ・ヴィトンが家具や照明、テーブルウェアなどを展示していたように、各ブランドがプロダクトだけではなく、ライフスタイル全般の世界観を構築しようとしているのも印象的でした。

池澤:デザインのレンジの広さを感じますよね。僕は海外のアートフェスに行くことが多いのですが、最近では古典的なア...

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