広告の企画制作の現場で着々と進んでいくAI活用。その一歩先で、映像から音まで全編生成AIを用いた映画制作を試みているのが映画監督の山口ヒロキさんだ。すでに国内外のAI映画祭で、多数の受賞歴を持つ。AIを用いた映像制作の現在の状況について、山口さんが解説する。

全編生成AIで制作した映画『グランマレビト』(2025年公開予定)より。
6分の短編映画から始まった
元々は、90年代の終わりから20年以上、SFを軸に、独自の世界観を追求した実写の映画制作に取り組んできました。そのなかで2023年頃に、当社のプロデューサーから「AIを使って映画をつくってみたらどうか?」と打診があったんです。でも当時はまだ、動画生成AIツールのRunwayが、動画から動画を生成できるGen-1というバージョンを出したばかり。映像の質的にもまだ映画制作には向かないものでした。
それから少し経った2023年末。その後発表されていたGen-2で生成した映像を見て、映像自体のリアリティも質も一気に進化を遂げていることに驚きました。そこでまずは、短編をつくってみることに。それが2024年6月に公開した『IMPROVEMENTCYCLE-好転周期-』(04)です。当時はMidjourneyで画像を生成し、それをRunwayで動かすという手法で制作しました。当時のRunwayは一度に...