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「仕事を奪う」は本当か 生成AIの隆盛とクリエイターの未来

グローバル事例に見る未来の可能性「AIはアイデアを実現する最高の手段になる」

  • 志村和広

The One Clubが主催する世界的なデザイン賞「ADC 102nd Annual Awards」に、今回から「AI部門」が新設された。その部門賞を獲得したのが「Voice Watch」だ。手がけたのは、「TUNA SCOPE」でも海外のアワードでの受賞実績を持つ電通の志村和広さん。他国の上位受賞作も含め、AIを活用したクリエイティブから見えた、未来の可能性とは。

トヨタ・モビリティ基金「Voice Watch」。

マグロを目利きできるAIは職人の仕事を奪うのか?

私が初めてAIというものに衝撃を受けたのは、2016年にカンヌライオンズのサイバー部門とクリエイティブデータ部門でグランプリを獲った「The Next Rembrandt」でした。これは画家のレンブラントが遺した作品群をもとに、AIがそのタッチを学習し、「新作」をつくるプロジェクト。当時自分も現地に行っていて、クリエイティブ産業で初めてAIがメインに使われた企画として大きなインパクトがあったのを覚えています。AIを活用したプロジェクトに興味を持ち、その後マグロを“目利き”できるAI「TUNA SCOPE」に着手しました。

当時から5年以上聞かれ続けているのが、「TUNA SCOPEは職人の仕事を奪うのではないか?」という質問。実際に職人の方々と話す中で答えは出ていて、「奪わなかった」です。職人の方々の仕事は「良いマグロを買い付けてお客さんに売る」こと。目利きやAIはその手段で、ポジティブに活用してくれています。

僕らの仕事の目的は「アイデア」をつくること。同様に考えると、AIは自分の実現したいアイデアを、より面白く、実現までの時間を速めてくれる良い手段(パートナー)になる存在だと考えています。AIを使えばこれまでは技術面でも時間やコストの面でも実現できなかったアイデアが、実現できるかもしれない時代になりました。

クリエイティブとAIの共同作業

今回受賞した「Voice Watch」は、モータースポーツ観戦のバリアフリー化のために、視覚障害者向けにリアルタイムで実況音声を生成するものです。トヨタ・モビリティ基金が「Make a Move PROJECT」で「障害の有無などにかかわらず誰もがモータースポーツ観戦を楽しめるアイデア」を公募していて、そこに応募する形でプロジェクトが始まりました。

当初はレース会場への移動を自由にするようなアイデアも検討していました。しかし実際に視覚障害者の方々にヒアリングをすると「そもそも行きたいと思わない。レースの状況がわからないし、一緒に行く人に聞くのは申し訳ない気持ちになるから」と言うのです。たしかに実況中継はありますが、それはレースが見えていることを前提とした内容。見えない人にも観戦を楽しんでもらうにはどうしたらいいのだろう? そう考え、Voice Watchの開発に至りました。

Voice Watchは3つのAIを組み合わせています。カメラ映像から車種を学習し、認識してトラッキングするもの、大量の走行データからその後のレース展開を予測するもの、プロアナウンサーの実況を学習し発話フレームを生成するものです。

新たなクリエイターとAIとの...

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「仕事を奪う」は本当か 生成AIの隆盛とクリエイターの未来

ChatGPTや画像生成などジェネレーティブAIがグローバルで席巻し、クリエイティブに限らずあらゆるビジネスシーンで導入が進んでいる現在。一方で法的・倫理的な側面から問題点が浮上し、規制に動く国や地域もありますが、活用やルールの制定においては議論が続きそうです。その中で生じているのが「AIがクリエイターの仕事を奪うのでは」といった論点。広告コミュニケーションの企画制作においてポジティブに活用される可能性もあれば、既存のクリエイティブ従事者にとっては脅威となるのでは――そのような流れに対し、制作の現場で今起きていること、また問題が生じていることとは。既に先行してトライアルを重ねているプロジェクト事例も交え、未来のAIとクリエイターの関係を考えていきます。