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どんな役割であろうと、アイデアが生まれる場所にいたい

公開日:2019年6月02日

  • 榎本卓朗(ENOAD)

アートディレクター、そしてCMプランナーとしても活躍し、広告の王道を行く榎本卓朗さん。「デザインぽいこと」には興味がないという榎本さんは何よりも「アイデア」を重視している。

ENOAD 榎本卓朗(えのもと・たくろう)
1977年、宮崎県生まれ。2000年に東京工芸大学芸術学部デザイン科を卒業後、博報堂に入社。2016年にENOAD設立。これまでの主な仕事に大塚製薬「カロリーメイト」、大塚食品「MATCH」、富士通arrows「割れない刑事」、日野自動車「ヒノノニトン」など。受賞歴は、東京ADC賞グランプリ、ACC賞金賞、ニューヨークADC賞銀賞、ロンドン国際広告賞銀賞、テレビ広告電通賞、TCC賞、ギャラクシー賞ほか多数。

意識は「広告制作者」

──博報堂から独立して3年目です。

博報堂には、17年在籍しました。いろいろな仕事を経験して、自分としてはある程度やりきったという気持ちになり。そこで、今度は外の環境で自分の力を試してみたくなったんです。他の会社の人と仕事をすると、自分はどうなるんだろう?博報堂という看板なしに、自分は何ができるんだろうか、と。1度きりの人生だし、いつ死ぬかわからないから、失敗してもいいからやってみようと。無謀にもナイキの広告のコピーの「どこまで行けるか」に挑んでみたわけです。

──博報堂時代はアートディレクターとして王道を歩んでいたという印象です。

自分では、ものすごく端っこを歩いてきたと思っています(笑)。確かに僕は広告だけのアートディレクターとしてだったら、ど真ん中かもしれない。でも、いわゆる「ザ・デザイン」的なことは全くやっていないんです。僕の制作のキャリアが、黒須美彦さんのチームでCMプランナーからスタートしていることが大きいのだと思います。そのことも影響して、未だに自分がアートディレクターである、という意識が薄くて。どちらかと言えば単純に「広告制作者」という意識です。

──自分を取り巻く環境の変化をどう受け止めていますか。

クライアントから求められている本質は、今も昔も変わらず「いいCMを作ってほしい」「いいグラフィックを見たい」ということ。ただ近年はやはりSNSの影響で、広告に対する反応がすぐに顕在化するから、話題の作り方が重視されるし、広告の目的がそういうことに左右されることが増えてきました。CM制作時には「6秒」を作ることも当たり前になっている。6秒なんて本当に短いから、ワンビジュアル・ワンメッセージじゃないと伝わらないんです。

そういう意味では広告の基本に帰って、ワンビジュアル、ワンメッセージが実は必要とされる時代になっているように思います。一枚絵に求められるのは、見た人の印象に残る強さ。つまり絵の本質にあるアイデアの強さが求められていると思うんです。ちなみに僕はタイポグラフィや平面構成や装飾的なものなど、いわゆる「デザインぽいこと」にあまり興味がなくて、絵作りにおいてはアイデアだけが頼り。どんなに環境が変わっても、自分のそういう考え方は変わらないですね。

個人的には、グラフィックは今追い風にあるのではないかと思うところもあるんです。交通広告でも、新聞でも目に留まれば、すぐにSNSに上げてくれるので、自然と広がっていく。今年3月に「HIMAWARI」で、縦書きの長いボディコピーの一番上の文字を横から読むと、隠しメッセージで「一生さんの腕の血管が好きです」という文章になるドア上広告を作ったんです。福部明浩さんと「これ、みんな気づくかな」とニヤニヤしながら作ったら、あっという間にSNSで話題になって。この人、天才かよと流石に思いましたけど。

こういうことがあるから、グラフィックのポスターの掲出場所がないとか、見られないとか諦めることはないじゃないかという気もしているんです。アイデアがあれば、グラフィックはまだ生き残る場所があるかも、と改めて思い始めたところです …

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この記事が含まれる特集

「ポスト2020」のアートディレクション

2000年代前半、広告界では佐藤可士和さんを筆頭にアートディレクターの仕事が広く世の中から注目されるようになりました。新聞広告やポスターを作ることのみならず、OOHでのダイナミックな展開やグッズ・商品開発、さらにはブランドや企業のCIなどまでを手がけ、アートディレクションの可能性とアートディレクターの関わる領域が大きく広がっていきました。

さて、そこから20年近くを経た現在、広告のメディアは大きく変わっています。ポスターからサイネージへ、そしてWeb、さらにはスマートフォンで見るSNSでの広告や動画、プロダクトなど、アートディレクションの表現領域がさらなる広がりを見せています。向き合わなくてはいけない領域やメディアが増える中で、今アートディレクターたちはどんな考えで、自身のアートディレクションを確立しようとしているのか。本特集では、30~40代のアートディレクター9人に、今、そしてこれからの「アートディレクション」について聞きました。