クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、新宿ゴールデン街「THE OPEN BOOK」店主の田中開さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『あの路地をうろついているときに夢見たことは、ほぼ叶えている』
森永博志(著)
(パルコ)
ひょんなキッカケで著者の森永さんに出会う機会があり、読ませてもらった著作。何が好きかって、あの政治紛争真っただ中の70年代にいながら、そこには目もくれず、今でいうところの渋谷/原宿カルチャーを開拓していたこと。いわば、先駆者的な存在だ。
まだ裏原もキャットストリートなんて言葉もない、住宅地だった原宿にクリームソーダやピンクドラゴンといったブティックをはじめた山崎眞行さんをはじめ、レジェンドたちとの邂逅話からは、当時の躍動感そのままに熱が伝わってくる。要は、今こうして巷に有りふれた"オシャレ"を築きあげた、その先見性とブレない軸に憧れを感じるのだ(自分だったら影響されて安保闘争とかに走ってたんだろうな)。
『ドロップアウトのエラい人』というインタビュー集にもたくさん登場するが、世界がどうこう言おうが、俺が面白いと思うのはコレだ、と人生を賭けて生きている人がたくさんいて、その姿に痺れる。しかしそれが、いつしか世間が放っておかない存在になってしまう(幸か不幸か)。「かっこいいお店を作っちゃダメなんだよ、みんなが何だこれ?ってお店じゃないと続かないよ」ともらった言葉は今でもお店の原点にある …