一昨年、ウォール街に移転したDROGA5。現在、社員は600人いるという。アンダーアーマーをはじめ、アンドロイド、プレデンシャル、モンデリーズなど、多様なクライアントのキャンペーンを手がけている。そのクリエイティビティはどこから生まれてきているのか。
人間性にこだわる
――DROGA5の仕事のモットーは?
私たちの会社のモットーとしては、“Creatively led, strategically driven(創造性によって導かれ、戦略によって動かされる)”というのがあります。設立者であるDavid Drogaの影響で、そういうマインドセットがクリエイターたちにまで備わっているのかもしれません。
私たちは仕事の質が何よりも重要だと考えています。もちろんクライアントとの関係性も大事ですが、いい仕事ができなければ意味がありません。お金のためにポリシーを曲げてやりたくないことをやるのではなく、同じ考えを持った、質の高い仕事を求めるクライアントと一緒にプロジェクトを進めたいのです。私たちのやりたいことができないのならば、クライアントとの契約をあきらめることすらあります。他の多くのエージェンシーでも同じようなことを言っていますが、実際にそれを実行できているのは私たちだけだと思います。
“Strategically driven(戦略によって動かされる)”はただおかしいとか、巧みだとか、視覚的に面白いとかというだけではなく、ブランドや会社や組織の目的を反映したアイデアを考えるということです。つまりクリエイティブな仕事をするときに、なぜそうするのかという理由を常に持っているということです。
――核となるアイデアは、社内でどのように出していくのでしょうか?
核となるアイデアは、ストラテジストとクリエイターが協力しあって一から作っていきます。クリエイターはクリエイティブの仕事について非常に強い意見を持っていますし、ストラテジストは戦略について非常に強い意見を持っています。そのことをお互いに認識した上で、一緒に作っていくのです。もちろん意見が合わないこともありますが、うまくいったときには、全員がそれを感じることができるほど、しっくり収まります。クリエイターとストラテジストは切り離すことができません。切り離すのは愚かだと思います。ここにいる人たちは誰も、別々に働きたいとは思わないでしょう。いいシステムだと思いますよ。
さて、次のモットーです。“Creativelyled, strategically driven”の次は“Digitallynative(デジタルを使いこなす)” です。私たちがエージェンシーに入った頃、ちょうどFacebookが生まれました。つまりデジタルは既にそこにあり、私たちはデジタルで物事を考えています。世界はとても広いので、「デジタルストラテジスト」の専門家を名乗っている人もいますが、ここではもっと総合的に考えなければなりません。
最後のモットーは“Humanity obsessed”、人間性にこだわるということです。これにはいくつかの異なる意味があります。まず、ほとんどの広告は不愉快で攻撃的で邪魔なもので、みんなできるだけ見ないようにしています。広告を無くしたいと思っているのです。私たちはそんなノイズの一部となりたくはありませんし、なる必要もないと考えています。私たちは人々の目や耳に入れて価値のあるものを作りたいのです。2つ目には、私たちの費やした時間や努力は、私たちが愛するもの、信じるものに向けて使われるべきだということです。ですからチャリティや、あまり儲けにならない試みにも自分たちの力を注ぎたいと思っています。3つ目として、私たちはブランドが、ただ商品を売るだけではなく、努力し続けることによって、地球市民の一員となれると考えています。
例えばPrudentialという老舗保険会社は、定年後の生活はどんなふうに感じられるものなのかを理解し、不安を無くすためのツールを作りました。とても美しいミッションだと...