生成AIの普及は、人々の情報接触の順序を大きく変えつつある。ニュースや知識の入口はメディアではなくAIとなり、記事や広告は“要約”の背後に埋もれてしまう危機に直面している。「カンヌライオンズ2025」で語られた内容も踏まえ、AI時代におけるメディアの存在意義とブランドの新たな役割について、LENSクリエイティブディレクター/共同代表の中田雅巳氏が解説する。
迫りくるメディアの危機感 要約に奪われる情報接点
AIは、私たちの仕事や思考に費やす時間をぐっと短縮してしまう存在です。調べ物をしたり、アイデアの材料を整理したりと何時間もかかっていた作業が、一瞬で「要約」されます。広告制作の現場でも、若いスタッフが「AIにまとめてもらってから深掘りします」と自然に言っているのを耳にするたび、正直ヒヤッとします。それはなぜなら、自分が積み上げてきたプロセスを、軽々と飛び越えられてしまったように感じるからです。
ただ、その衝撃こそが「いま」を象徴しているのだと思います。AIは効率を極限まで高めてくれる一方で、失われてしまうものもあります。それは「心に残る体験」です。要約され、消えてゆく情報が増えている時代だからこそ、体験型コンテンツの価値はむしろ増しています。それは情報を伝えるものではなく、人の時間に刻まれる出来事をつくるものだからです。
2025年のカンヌライオンズでも、AIの“効率性”が注目される一方で、「感情を動かす体験こそが差別化の本質」と語られるセッションが多く見られました。生成AIは「要約」を極めていますが、企業やブランドが本当に残す...

