AI時代のコンテンツ過多の中で、マーケティングやクリエイティブを生み出している我々に今、求められていることとは何か。その解決の糸口となる「ブランドの『真正性』をエコシステムへ昇華させる構造イノベーション」について、カンヌライオンズ2026を現地で体感したクリエイティブディレクターの阿部光史が紐解く。
ガリアーノインスピレーションズ
代表
クリエイティブディレクター
阿部光史氏
専門は広告クリエイティブ、ブランディング。クリエイティブディレクターとして数々のブランディングやアイデア開発を手がけるほか、大学講師として後進の育成にも従事する。カンヌライオンズ等の世界的トレンド分析や、AI・プロトタイピングを活用した表現開発など幅広く活動。
爆発的に増えた情報量 生活者の注意力はすでに限界
生成AIの急速な普及とデジタルプラットフォームの高度化は、マーケティングコミュニケーションの現場に「コンテンツのインフレ」をもたらした。マッキンゼー・アンド・カンパニーがカンヌライオンズの潮流を分析したレポート『The real signals from Cannes Lions』が指摘するように、AIによってコンテンツの制作・配信コストが激減した結果、市場に出回る情報量は爆発的に急増している。
しかし、その一方で生活者のアテンション(注意力)はすでに限界を迎えており、投下されたコンテンツの多くは誰の記憶にも残らず、タイムラインの彼方へ埋没しているのが実態だ。
近年のカンヌライオンズでも繰り返し警告されているのが、この「効率の罠」とキャンペーンの短命化である。短期的なパフォーマンス指標や一時的なバズばかりを追い求め、施策のサイクルが極端に高速化・細分化した結果、予算は削られ、一瞬で消費されて消え去る単発のプロモーション─いわゆる「販売施策×PR案件」─が量産される構造的病理が生まれている。
SNSユーザーの情報リテラシーが高まっている現在、過度な演出や、ブランドとの本質的な親和性を欠いたPR投稿は、生活者に見透かされるだけでなく、かえってブランドとの距離を生んでしまう。今、企業に求められているのは、発信者自身の体験や価値観に根ざした「オーセンティシティ(真正性)」を土台とし、人々やクリエイターが自発的に誰かに語りたくなる「語られる理由」をシステムとして設計することではないだろうか。
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