「細分化された広告」を捨て「語られる理由」を設計せよ

公開日:2026年8月31日

  • 阿部光史氏(ガリアーノインスピレーションズ)

AI時代のコンテンツ過多の中で、マーケティングやクリエイティブを生み出している我々に今、求められていることとは何か。その解決の糸口となる「ブランドの『真正性』をエコシステムへ昇華させる構造イノベーション」について、カンヌライオンズ2026を現地で体感したクリエイティブディレクターの阿部光史が紐解く。

ガリアーノインスピレーションズ
代表
クリエイティブディレクター
阿部光史氏

専門は広告クリエイティブ、ブランディング。クリエイティブディレクターとして数々のブランディングやアイデア開発を手がけるほか、大学講師として後進の育成にも従事する。カンヌライオンズ等の世界的トレンド分析や、AI・プロトタイピングを活用した表現開発など幅広く活動。

爆発的に増えた情報量 生活者の注意力はすでに限界

生成AIの急速な普及とデジタルプラットフォームの高度化は、マーケティングコミュニケーションの現場に「コンテンツのインフレ」をもたらした。マッキンゼー・アンド・カンパニーがカンヌライオンズの潮流を分析したレポート『The real signals from Cannes Lions』が指摘するように、AIによってコンテンツの制作・配信コストが激減した結果、市場に出回る情報量は爆発的に急増している。

しかし、その一方で生活者のアテンション(注意力)はすでに限界を迎えており、投下されたコンテンツの多くは誰の記憶にも残らず、タイムラインの彼方へ埋没しているのが実態だ。

近年のカンヌライオンズでも繰り返し警告されているのが、この「効率の罠」とキャンペーンの短命化である。短期的なパフォーマンス指標や一時的なバズばかりを追い求め、施策のサイクルが極端に高速化・細分化した結果、予算は削られ、一瞬で消費されて消え去る単発のプロモーション─いわゆる「販売施策×PR案件」─が量産される構造的病理が生まれている。

SNSユーザーの情報リテラシーが高まっている現在、過度な演出や、ブランドとの本質的な親和性を欠いたPR投稿は、生活者に見透かされるだけでなく、かえってブランドとの距離を生んでしまう。今、企業に求められているのは、発信者自身の体験や価値観に根ざした「オーセンティシティ(真正性)」を土台とし、人々やクリエイターが自発的に誰かに語りたくなる「語られる理由」をシステムとして設計することではないだろうか。

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インフルエンサーマーケティングは、もはや定着したコミュニケーション手段となりました。しかし、生成AIの普及や情報の氾濫に伴い、単なる拡散(リーチ)ではなく、発信者自身の体験や価値観に根ざしたオーセンティック(真正性)なコミュニケーションと、それを通じた強固な信頼関係の構築が求められるようになっています。本特集では、「人がメディアになる時代」におけるインフルエンサーマーケティングを、単なるSNS施策を超えた「ブランドと生活者の信頼・共感を紡ぐ戦略」として再考。最新の信頼意識調査や消費者行動の分析に加え、アーティストとの対等な商品共創、社員インフルエンサーの組織的活用、コミュニティ醸成、バーチャルヒューマンによる一貫した世界観の構築など、最前線の事例をひも解きます。

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