メーカーにとって長らくブラックボックスになっていた「出荷後の商品動向」。インテージが開発したデータ統合プラットフォーム「POS-is(ポスイズ)®」は、この業界の長年の課題を解消するものだ。広告費の5倍以上の規模を持ちながらデータ活用が手つかずだった販売費の適正化から組織全体のデータ活用に至るまで、サプライチェーンとブランド収益を劇的に変える革新的アプローチについて、話を聞いた。
店頭起点のデータ基盤が導く 感覚に頼らないチャネル戦略
消費財メーカーと流通業界の間には、長年にわたり「製配販、および生活者データの分断」という溝が存在してきた。消費財はメーカーが製造し、卸を経て小売店に並び、最終的に生活者の手に渡る。この一連の流れのなかで、出荷された商品がその後どのように動き、誰の手に渡ったのかという事実は、メーカーにとって長らくブラックボックスの状態にあった。
この構造的課題に対し、インテージが約200社のヒアリングを経て開発したのが、流通・メーカー向けのデータ統合プラットフォーム「POS-is(ポスイズ)」だ。単なる分析ツールではなく、マーケティングと営業の断絶を解消し、ブランドの収益構造を変革する共通データ基盤として開発した。
マーケターが渇望する「生活者のリアルな変化」は、「店頭」に最も表れる。なぜなら、売り場に蓄積されるPOSデータには、変化の兆しと未来へのシグナルが詰まっているからだ。しかし、これまでは小売店ごとにデータ形式が異なるため、情報は煩雑でマーケティングの場での活用が進んでいなかった。インテージ デジタル戦略本部 ビジネス企画室 室長の今井康善氏は、「出荷後の過程が見えないため、これまでメーカーは適正な生産量がわからず廃棄や欠品が生じ、サプライチェーンの最適化や店頭プロモーションの改善もままならなかった」と語る。
そこで同社は、SRI+®(全国小売店パネル調査)など市場データビジネスで培った強みを最大限に活かすアプローチをとった。同社は約350社のチェーンストアから日々POSデータを収集しており、小売業態ごとに異なるデータの“癖”を熟知している。この知見を活かし、AI技術を用いることで、バラバラに存在するPOSデータや卸のデータをインテージ独自のマスタで整理・統合。あたかもトレーサビリティのように追跡できる仕組みを構築した。
「POS-is」導入の財務的インパクトは大きい。一般的な消費財メーカーにおいて、広告宣伝費が売上の数パーセントであるのに対し、販促費や物流費などの販売費は15~20%を占めることが多い。広告費の5倍以上もの規模を持つ販売費領域は、広告費が厳密に管理されているのとは対照的に、データ活用のメスが入っていない「空白地帯」であった。試算によれば、売上1000億円規模の企業において、需給の不一致によるムダを含め、最適化の対象となりうる販売費・物流費の規模は、最大210億円にも達する。そのため「POS-is」の導入について、「原料高や売上の伸び悩みのなか、特に在庫や販売費を最適化するツールとして注目が集まっている」と今井氏は話す。
実際、「POS-is」を先行導入した企業では、POSデータと卸の納入実績を組み合わせることで店舗在庫を可視化した。その結果、市場全体での余剰在庫が追跡可能になり、商品廃棄の削減と生産調整の精度向上を実現している。
図表 サービス全体像
*統合基盤からダッシュボードまですべてお客さま環境内に構築するため、外部へのデータ提供が不要
提案から実売データまでつなぎ マーケと営業の食い違いも解消
「POS-is」はマーケティングと営業の連携強化においても真価を発揮する。これまでは、営業部門が店舗に商品を提案した後、実際に店頭で「売り場」がつくられたかという「店頭実現」の視点が抜け落ちがちであった。マーケターが描く戦略と、営業現場の動きがリンクしていなければ、どれほど優れた消費者コミュニケーションを行っていても商品は売れない。そこで「POS-is」は、営業の提案から小売店の採用、実売データまでを一気通貫でつなげることで、マーケティングと営業の食い違いを解消する。POSデータは単なる「売上管理」の数字ではなく、マーケティング施策の成否を示す「通信簿」となるのだ。
今井氏は「チャネル最適化もマーケターにとって、重要課題です。当社ではSCI®(全国消費者パネル調査)というマーケットデータを持っていて、どのカテゴリでどのチャネルが伸びているかがわかります。例えば『コストコで売上が伸びているのに商品のカバー率が手薄』といった課題が一目瞭然になります。競合は対応できているのに自社は手薄となれば、コストコ専用規格品の開発が必要だ、といった意思決定にもつながります」と説く。このように、客観的な市場データと自社の実売データを重ね合わせることで、感覚ではなくファクトに基づいたエリアごとの戦略立案が可能になる。
また、組織内でのデータの在り方そのものを変革する点も見逃せない。従来、小売りからのデータや卸のデータは、営業担当者が個人のPC内で管理し、棚割り提案やリベート計算に使うだけの「個人の持ち物」になりがちだった。しかし、これでは全社的な資産として活用できない。
そこで今井氏は、「『POS-is』を活用して、生活者の需要がわかる店頭起点のデータを全社で共有し、使えるようにしていくことを目指している」と語る。
今後、インテージではスノーフレイク社の高速処理基盤をベースに、さらなるデータの統合と自動化を推し進める構想を描いている。
「これまで、POSデータや広告宣伝のデータなど粒度が違ってデータ同士がつながらない問題がありました。しかし今後は、既存のデータに対してもクレンジングを行いながらデータ間をつなげ、統合していきます。インテージの商品マスタや店舗マスタを軸にさまざまなデータを紐付けられるようにし、誰でも簡単にデータやAI活用ができるような『データ活用の民主化』を目指していきたいです」(今井氏)。
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