昨今、日本を含む世界の選挙では、立候補者や政党の情報がショート動画などのSNSで大量に発信されている。政治への関心が低い層にも情報が届く一方、政策よりも断片的な発言や印象的な場面が拡散されやすい。本稿では、こうした選挙行動を手掛かりに、アルゴリズムが強さを発揮する時代の情報伝播と拡散について、東京大学大学院 人文社会系研究科 准教授の稲増一憲氏が解説する。
難しい問題を「わかりやすく」 安易に意見を持つことの危険性
いかに有用な情報が目の前にあったとしても、人々が注意を向けなければ、それは存在しないのと同じである。その意味で、情報の「わかりやすさ」は大きな価値を持つ̶。
1990年代に米国のメディア研究者のニューマンは「注意のバリア(attention-barrier)」という概念を提唱した。彼が行った実験(新聞とテレビによるニュース接触の差異を比較する実験)の結果は次の通りだ。新聞のような印刷メディアは、エイズや薬物乱用といった元々人々の関心が高いテーマについては、詳細な情報を届ける役割を果たすものの、安全保障問題などの政治的なニュースにおいては、読者に注意を向けさせられなかった。それに対してテレビは、安全保障問題という難しいニュースを「わかりやすく」伝えることで、人々の注意のバリアを突破できたのである。
一方で、米国の政治コミュニケーション研究者であるバウムが2000年...

