機能や価格以外の価値で差別化ができないと、価格競争のパワーゲームに巻き込まれかねません。他社商品との差別化要素を軸に、選ばれる理由をつくることが、長期に市場で優位性を保つブランド力の根幹になると言えるでしょう。生活者インサイトをもとにヘアケアカテゴリーにおいて、これまでにない価値軸を提案するクラシエと、既存資産の再解釈で購買体験を設計し直す日清食品。両社の実践から、成熟市場におけるブランド価値拡張の方法論を考えます。
クラシエ
ホームプロダクツカンパニー
マーケティング室室長
井上 博氏
1992年入社。東京支店で営業を経験後、2006年からマーケティング部にてヘアケアを担当。主にいち髪のブランドマネージャー及びディアボーテ・マー&ミーの立ち上げに参画。新規事業推進部・EC推進部を経て、2023年より現職。
日清食品
ビヨンドフード事業部
副事業部長 兼
マーケティング部長
中村洋一 氏
Mizkan、日本コカ・コーラで営業、新規事業創造、ブランド・ショッパーマーケティング責任者を歴任。2018年日清食品ホールディングス入社、明星食品執行役員マーケティング本部長、日清のどん兵衛ブランド統括責任者を経て現職。
競合激しいヘアケア市場 トップブランドでもシェア7%
―ヘアケアや食品は、非常にコモディティ化が進んでいるカテゴリーです。この厳しい環境下でのブランド戦略においては、どんな点が課題となっているのでしょうか。
井上:ヘアケア市場は参入障壁が非常に低く、新商品が次々と棚に並ぶ世界です。そのため、売上1位の商品でもシェアは7%ほど、5%もあればトップクラスのブランドと呼べる状況です。とはいえ、「シェア5%を獲ることができれば、トップと言えるのだから、うちの商品も100人中、5人のお客さまに支持されればいい」とは、...
