増毛サービスやウィッグなどのヘアケア事業で、40年以上にわたり顧客の深い悩みに寄り添い続けてきたスヴェンソン。テレシーをパートナーとした「データ基盤」と「ブランド強化」の両輪による事業改革により、事業成長を加速させている。その戦略の要諦を、スヴェンソンの本谷光洋氏と北島寛之氏、テレシーの川瀬智博氏に聞いた。
データが“サイロ化”状態に 改革の第一歩はCDP構築
―2024年、40周年の節目にマーケティング戦略を見直した背景を教えてください。
本谷:私は元々美容師として、長年スヴェンソンの店舗で現場を見てきました。事業部長に就任したのは2024年4月。その時に直面したのが、「事業状況を精緻に分析できない」という壁でした。システム増改築が繰り返され、データがサイロ化し、部署によって確認している数字も違う。加えて、店舗、製品開発、マーケティングといった各部門がプロとして最善を尽くす一方で、それぞれが異なるKPI、つまり“違う山”を登っている状態でした。これでは的確な事業判断もできないばかりか、組織横断の挑戦なども生まれません。「このままでは戦えない」という危機感から、データ基盤と組織の足場固めを決意しました。
―テレシーではどのようなサポートを行いましたか。
川瀬:スヴェンソンさんとお話をして、まず大切にしなければならないと思ったのは「安易に効果を煽る手法は絶対にしない」「確かな技術と製品で、お客さまの生活を良くしたい」という誠実な姿勢です。ただ、この本質的なメッセージをクリエイティブとして表現する前段階として、まずはマーケティング施策を正しく評価できる「土台」が不可欠だと考えました。
例えば、「まずはヘアケアやカットなど比較的手軽なサービスの体験や無料のご相談から始めてもらいながら、将来的にスヴェンソンブランドのファンになっていただく」という想いがあります。しかし、データが分断されたままでは、顧客のジャーニーを正確に追跡できず、よりよいサービスのご提供につながりません。そこで、まず顧客理解の基盤となるCRM改善やCDP構築をご提案しました。
北島:テレシーさんは、CDP構築のようなデータ基盤整備から、それをどうコミュニケーションに落とし込むかというクリエイティブ開発まで、一気通貫でデータドリブンのマーケティングを支援していただける体制があります。今回も、分断されがちな領域を「オールインワン」で支援していただきました。
コンプレックスを煽らない「品格」あるクリエイティブに
―データ基盤という「守り」を固めた上で、ブランドコミュニケーション刷新という「攻め」に着手されたのですね。
本谷:お客さまが本当に求めているのはウィッグそのものではなく、その先の「気兼ねなく過ごせる自由な生活」です。私たちの特許技術である24時間着脱不要の増毛法は、まさにそのためのもの。この本質的な価値を誠実に伝えたいと考えました。
北島:業界内ではコンプレックスを煽る訴求が多い中で、私たちは技術力と品格を表現するべきだと考えました。私たちは、お客さまの悩みをネガティブに捉えず、「なりたい姿」を応援する。その想いを「自分を磨く術(スヴェ)がある。」というタグラインに込めました。
新ブランドアンバサダーを務めるのは、長年にわたり幅広い世代から支持を得てきた20th Centuryの3人です。坂本昌行さん、長野博さん、井ノ原快彦さんの、健やかで洗練された“よい年の取り方をしている大人”というイメージとも完全にマッチし、私たちのメッセージが好意的に受け入れられたと感じています。2025年6月の放映開始以降、多くのお問い合わせをいただくなど、確かな集客効果にもつながりました。
―ビジネス上の成果以外の反響はありましたか。
本谷:最も心に響いたのは、テレビCMについてスタッフから「友人からCMを見たと言われて誇らしかった」という声が上がってきたことです。20年以上前、お客さまからは「CMはやらないで(スヴェンソンに通っているのを周りに知られたくないので、有名になってほしくない)」と言われることもありましたが、今回のCMは「かっこいいね」というお声をいただくことも。インナー向けのブランディング効果はもちろん、お客さまの意識の変化も実感しています。
新CMとして「自分を磨く術」篇、「自分を磨く術 増毛」篇、「自分を磨く術 ウィッグ」篇の3種を放映。このほかテレシーでは、各種キービジュアル制作、メディアプランニング、PR、分析などのコミュニケーション領域を一気通貫でサポートした。
―最後に、ブランドの未来像をお聞かせください。
北島:まず初めにデータ基盤の整備に着手したからこそ、その後のテレビCMという形で、的確なブランドメッセージを届けることができました。次はお客さまの不安やご要望に対し、蓄積したデータを活用して最適なご提案をしていくパーソナライズのフェーズです。増毛やウィッグを心から楽しめる社会を創るために、一つひとつのマーケティング活動を積み重ねていきたいです。
本谷:お客さまのお悩みは本当に深いです。もっと気軽に相談できる接点をたくさんつくるなど、お客さまに「救われたな」と思ってもらえるための最適な道筋を模索していきます。
川瀬:私たちはまず、データ基盤を活かしたワン・トゥ・ワンマーケティングを加速させ、足元の成果を確実に出し、事業の土台をさらに強固にしていきます。その上で、将来的には、より情緒的な価値を伝えるコミュニケーションにも挑戦していきたい。データとブランドの世界観、この両輪を回し続けることで「さすがスヴェンソンだ」と思っていただける未来を共に創っていきたいです。
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