生活者の選択と企業価値をつなぐ いま企業ブランドを強化する理由とは

公開日:2026年9月14日

  • 小々馬敦氏(立教大学)

情報や選択肢があふれるなか、生活者の商品選択において、企業への信頼が果たす役割が大きくなっている。企業・技術・商品をつなぐブランド体系から、企業価値への貢献、生成AI時代の情報発信まで、産業能率大学経営学部教授の小々馬敦氏が解説する。

商品ブランドから企業ブランドへ 変わり始める生活者の選択基準

市場には日々、新しい商品やサービスが登場している。商品の選択肢が増える一方、SNSやECサイト、動画メディアなどを通じて、生活者が接する情報量も爆発的に増加した。企業にとっては顧客接点をつくりやすい環境になったように見えるが、生活者からすれば、一つひとつの商品名や特徴を記憶し、比較することが難しくなっている。それに伴い、多くの商品カテゴリーにおいて、商品ブランド名の「純粋想起」は得にくくなっている。これは、生活者がブランドに対する関心を失ったというよりも、無数に存在する商品ブランドのすべてをいちいち記憶する負荷を避けるようになったと捉えるべきだろう。

実際に大学生の購買プロセスを観察すると、商品に出会って興味を持った時点で検索を始め、口コミやレビューを確認しながら購入を決めている。その際、商品名を頭の中に記憶するのではなく、商品画像やSNS上のユーザー投稿をスマートフォンに保存しておくことが多い。常に身近に置くスマートフォンが、脳の代わりとなる外部メモリーとして機能し、購買候補となる「想起集合」が、脳内だけでなく、スマートフォンの中にもつくられている。こうした行動は、若い世代に限らず広がりつつある。

現在の生活者は、多数の商品を詳しく比較すること以上に、大量の情報に惑わされず、「この商品は自分に合っていて、購入しても失敗しない」と確信を持てる情報を求めている。複雑な商品選択を簡略化するショートカットとして、企業ブランドがこれまで以上に意識される可能性は高い。「この企業はこの分野に強い」「この会社の商品なら大丈夫そうだ」と認識されれば、初めて目にする商品であっても購入の選択肢に入りやすくなる。そのため、企業ブランドは、「失敗したくない」「後悔したくない」という生活者の選択を支援する情報になりつつあると感じる。

昨今、商品選択において、「どのような効用が期待できるのか」「なぜその効果が期待できるのか」という実利と根拠が重視されるようになった。化粧品や食品、日用品などでは、特殊成分、独自素材、特許技術といったファクト情報が、購買を後押しする重要な手掛かりとなっている。商品パッケージでも、「クエン酸で超消臭」「炭酸洗浄ハミガキ」のように、機能成分と効用を組み合わせた訴求文言がブランド名以上に目立つ。商品がもたらす便益と、それを支える企業固有の技術や成分が結び付いて伝わることで、生活者がその商品を選ぶ際の納得感は高まる。

情報も選択肢も増え続ける時代に、企...

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